沖縄やハワイなど南の島の音楽は心が晴れ渡るような明るい歌や踊りが特徴的です。明るい太陽、広がる青空と海、さわやかな風、緑の木々に鮮やか色の花々-歌や踊りの中にも豊かな自然と穏やかな生活を感じます。
沖縄と同じ緯度帯にある小笠原諸島(東京都)も同じです。小笠原古謡に「南洋踊り」「丸木舟」「レモン林」などがありますが、特に南洋踊りは返還祭などの島の祭りやサマーフェスティバル、連合運動会、敬老大会、観光客の歓迎イベント、日本一早い海開き(1月1日)などで披露され、腰みのや首飾り、髪飾りを身につけたいかにも南島らしい素朴な踊りで親しまれています。2000(平成12)年には小笠原における南方文化伝播の実態を知ることができる貴重な踊りとして「小笠原の南洋踊り」が東京都の無形民俗文化財に指定されました。 南洋踊りは、日本が第二次世界大戦前の1914(大正3)年から1945(昭和20)年の敗戦まで委任統治領だったサイパン・トラック・パラオなどの南洋群島(旧ドイツ領ミクロネシア)へ仕事に行っていた父島聖ジョージ教会初代牧師の長男、ジョサイア・ゴンザレスが現地の島々の歌と踊りを覚え帰ってきてから小笠原諸島に広めたといわれています。時期は大正末期から昭和の初め頃で、南洋踊りを構成する5つの歌の一つ「夜明け前」の原曲はサイパンにあることなどから「南洋踊りはサイパンから小笠原に伝わった」と説明する資料もあります。1968(同43)年の日本復帰頃までは一般に「土人踊り」と呼ばれました。
第二次世界大戦中、小笠原諸島の住民が強制疎開によって本土に移動させられたことから南洋踊りは一時途絶えたかにみえましたが島を離れた住民の間で伝えられており、日本復帰後に小笠原で復興されました。1981(同56)年には「南洋踊り保存会」が設立されています。
南洋踊りは「レフト、ライト」という言葉に合わせる行進のポーズで始まり、5つの曲を同じポーズでつないでいきます。曲は「ウラメ」「夜明け前」「ウワドロ」「ギダイ」「締め踊りの唄(アフタイラン)」で、歌詞は「夜明け前」と「締め踊りの唄(アフタイラン)」の前半は日本語ですが、他は南洋群島の言葉だということです。たとえば「ウワドロ」は「ウワドロフィ イヒヒ イヒヒ」で始まりますが意味はわかりません。タマナ(テリハボク)をくりぬいて作った打楽器「KAKA(カカ)」をギンネムの木で叩いてリズムを刻み、それに合わせてこの歌を歌い、踊ります。
ミクロネシアの「行進踊り」、ヤップ島の「マース」「テンプラオドリ」との関係が深いといわれる南洋踊りですが、YouTubeで動画を鑑賞して南島の空気を感じてください。
■南洋踊りの動画の例
・https://www.youtube.com/watch?v=z6lHS4lKXYM(「BoninGIAN」チャンネル)
・https://www.youtube.com/watch?v=Qk45D1YMoH4(「kathyの音あそび」チャンネル