びえんと《レイテ島決戦の陰で泣く慰安婦 上》文・井上脩身

『もうひとつのレイテ戦』の表紙

【LAPIZ ONLINE】太平洋戦争の敗色が濃厚となるなか、レイテ島決戦が始まったのは1944(昭和19)年10月20日だと新聞のコラムで知った。その日はわたしが生まれた日である。日本軍が占領していたフィリピンのレイテ島に米軍が上陸、激戦が繰り広げられた。日本軍は約8万人が戦死する壊滅的打撃を受けたが、この戦いではじめて特攻隊を編成、体当たり攻撃という異常な戦闘態勢を展開していく契機となった。レイテ戦について資料を集めると、おもいがけない本に出合った。『もうひとつのレイテ島』(発行・ブカンブコン)。慰安婦にさせられたレメディアス・フェリアスさんが、性暴力を受けた体験を著わしたもので、「日本軍に捕らわれた少女の絵日記」の副題がつけられている。玉砕と特攻という「聖戦」のかげで、日本軍が現地の人たちの尊厳を踏みにじっていたとき、わたしはこの世に生を受けたのであった。 “びえんと《レイテ島決戦の陰で泣く慰安婦 上》文・井上脩身” の続きを読む

story《人形の話》片山通夫

「ひな人形・その由来」

滋賀県・日野町のひな人形

かわいい、もしくは綺麗なお雛様の日、ひな祭りは今日3月3日で女の子の節句として日本各地で盛んだ。ひな祭りの歴史はかなり古く、平安時代中期(約1000年前)にまでさかのぼるという。当時は三月の初めの巳の日に、上巳(じょうし)の節句と言い、無病息災を願う祓いの行事が盛んだった。 “story《人形の話》片山通夫” の続きを読む

LapizOnline《巻頭言》井上編集長

【LapizOmline】最近、早乙女勝元さんの『東京大空襲ものがたり』(金の星社)を読みました。小学生の男の子がゼロ戦のプラモデルの組み立てに夢中になるくだりがあり、小学校時代の友だちのYくんを思いだしました。手が器用なYくんは長さ10センチ余りのゼロ戦の模型をつくり、みんなに見せびらかしていました。半藤一利さんの『昭和史1926―1945』(平凡社)には、ゼロ戦は紀元2600年に正式に戦闘機として採用されたとあります。神武天皇が即位した年を元年とし、2600年にあたる1940(昭和15)年に、紀元2600年を迎えたのです。その年、ゼロ戦は「神の国」のエースとして登場したものの、はるかに性能がまさるB29にはかなわず、敗戦を迎えたのでした。 “LapizOnline《巻頭言》井上編集長” の続きを読む

《Lapizとは?》Lapiz 編集長 井上脩身

ベイルートにて 片山通夫

【LapizOnline】Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味。地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizには、そんな思いが込められている。

連載コラム・日本の島できごと事典 その160《戸数制限》渡辺幸重

相模湾に浮かぶ初島(「*and trip.」サイトより)

島では食料生産や生活インフラに限界があることから島内の戸数を制限してきた島があります。静岡県の熱海港沖、相模湾に浮かぶ初島もその一つで、江戸時代から現在まで耕作地や水源、漁獲を島民で均等に分け合う共同体的生活が営まれるようになり、40戸前後の戸数が維持されてきました。「次男以降は島を出て、跡取りがいない家は婿養子をとる」という不文律が脈々と守られてきたのです。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その160《戸数制限》渡辺幸重” の続きを読む

ご挨拶

明けましておめでとうございます。
本年もよろしく御願い申し上げます。
               2025年1月1日
昨年から色々考えることが多くなりました。

わが身をめぐる時の流れが、瞬く間と言えるほどの速さに戸惑い、はたまた、今やりかけている写真作品の制作の終わりの見えぬもどかしさ。考えてみれば、80年を生きてきたわけです。当然と言えば当然なのかもしれません。昨年から私が80歳になった記念に纏めだした写真があります。大阪の町や神戸の町などを、私にとっては「新しい感覚」で(ホンマかいな?)撮影したものを纏めております。近場で彷徨いながら撮った写真です。今後Web上で順次掲載してゆきますので是非ご覧ください。

大津絵の筆のはじめは何仏 芭蕉

挿絵は鬼が僧衣をまとっている絵で、慈悲ある姿とは裏腹な偽善者を諷刺したものです。鬼の住まいは人間の心の内にあるということで、描かれた鬼の角は、佛の教えである三毒(貧欲・瞋恚・愚痴)いわゆる人々の我見、我執であると言えます。人は自分の都合で考え、自分の目でものを見、自分にとって欲しいもの、利用できるもの、自分により良いものと、限りなく角を生やします。大津絵の鬼は、それを折る事を教え、鬼からの救いを示唆しているとも言われています。