編集長が行く《特攻のまち、知覧 02》 文・写真 井上脩身

鳥濱トメしのぶ知覧茶屋

 トメの味をしのぶ知覧茶屋

【LapizOnline】知覧をたずねた。特攻隊についての遺品や資料の大半は知覧特攻平和会館で保管、展示されている。
同会館の玄関を入ると、まず目に入るのが一式戦闘機「隼」の機体だ。私は戦争が目的(当然のことだが)である戦闘機を見るのは好きでない。しかし卓庚鉉が特攻出撃のため搭乗したのは隼だ。目をこらした。機体の銅には大きく日の丸がえがかれている。操縦席は地上から2・5メートルくらいの高さにある。もし女学生が出撃を見送りに来ていたら、その中にトメの娘がいないか、目を走らせたであろう。操縦かんをにぎったとき、アリランを口ずさんだだろうか。わたしはグレーの機体を見ながら、卓庚鉉に思いをめぐらしたのであった。 “編集長が行く《特攻のまち、知覧 02》 文・写真 井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《特攻のまち、知覧 01》 文・写真 井上脩身

アリラン特攻隊の悲劇

映画『ホタル』のポスター(ウィキベテアより)

【LapizOnline】6月上旬、兵庫県東部の山あいでホタル狩りをした。静かな清流の上で光を点滅させながら舞う数十匹のホタルを目にし、心が和むおもいであった。一匹のホタルを手のひらにのせていて、ふと、映画『ホタル』のラストシーンをおもいだした。映画に登場するのはひとりの朝鮮人特攻隊員。彼は知覧から飛び立ち、南の海で散る。そのおもいはどうであったのだろう。「特攻のまち」といわれる鹿児島県南九州市知覧町をたずねた。

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編集長が行く《水俣の海(熊本県水俣市)》文、写真 井上脩身編集長

企画展「水俣病を伝える」のパンフレット

~チッソの企業犯罪いまに伝える~
【LapizOnline】2月下旬、水俣(熊本県)に立ち寄った。かねてから水俣病の元となった有機水銀がたれ流された海を見たい、と思っていたのだ。水俣の岸辺から望む八代海は、おだやかに冬の日をあびていた。私が立っているのは「エコパーク水俣」。水銀ヘドロの海が埋め立てられ、現代風の親水公園に生まれ変わった今は、かつてここが地獄の海であったのがウソのようだ。実際、水俣病の公式確認から70年近くたち、水俣病という公害被害を知らない人が多くなっているといわれる。「水俣の苦しみが忘れられている」。そんな被害者たちの苦悩にこたえて3月14日から大阪・吹田市の国立民族学博物館で水俣病に関する企画展が開かれた。タイトルは「水俣病を伝える」。私はこの展覧会場に2回足を運んだ。 “編集長が行く《水俣の海(熊本県水俣市)》文、写真 井上脩身編集長” の続きを読む

編集長が行く《ひろしま美術館 ひだまりの絵本画家・柿本幸造 002》井上脩身

やさしい目の「どんくまさん」

美術館入り口の柿本幸造展表示
美術館入り口の柿本幸造展表示

柿本は「どうぞのいす」より少し早い1966年、至光社創業者の武市八十雄、同社編集者の蔵富千鶴子と話し合い、「不器用で失敗して迷惑をかけるけれど、それなのにどうしても憎めない、こんな主人公の絵本を作ろう」と、「どんくまさん」シリーズを始めた。武市がアイデアを出し、蔵富が文章を書き、柿本が絵を描くという分業方式だった。 “編集長が行く《ひろしま美術館 ひだまりの絵本画家・柿本幸造 002》井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《ひろしま美術館 ひだまりの絵本画家・柿本幸造 001》井上脩身

~旅先で引きこまれた絵本の原画~

柿本幸造氏(ウィキベテアより)

2023年末、広島を旅したさい、ひろしま美術館に立ち寄った。同館にはバルビゾン派以降の西洋絵画のほとんどの巨匠の作品を展示しており、久しぶりに名画に触れてみたいと思ったのだ。訪ねてみると、特別企画として柿本幸造という広島県出身の絵本画家の原画が展示されていた。 “編集長が行く《ひろしま美術館 ひだまりの絵本画家・柿本幸造 001》井上脩身” の続きを読む