びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身

――飯塚事件にみる司法の犯罪――

犯行否認のまま死刑を執行された久間三千年さん(ウィキペディアより)

【LapizOnline】32年前、福岡県飯塚市で小学生の女児2人が殺害された飯塚事件の再審請求審で、福岡地裁は6月5日、再審を認めない決定をした。事件の犯人とされた久間三千年さんは、判決が確定後に死刑を執行されており、死刑後に無実となる初のケースでは、と期待されたが、裁判官は「死刑制度護持」という国家のメンツにしばられたのだ。私は以前、「びえんと」のなかで京アニ事件を取り上げたさいに飯塚事件にも触れ、「報復主義に基づく死刑制度を考え直すよう」求めた。もし久間さんが無実であるならば報復される理由すらない。再審をすべきかどうかを判断するにさいし、「誤った死刑執行ではなかったか」との思いが裁判官の頭の片隅にすらないならば、「無辜の救済」という再審の理念は空念仏になる。 “びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

Lapiz2024秋号Vol.51《巻頭言》井上脩身編集長

『知覧からの手紙』の表紙

【LapizOnline】購入した本をつんどくにしたまま、読んでないことすら忘れてしまうことは二度や三度ではなく、何かの拍子に見つけてハッと恥じ入ることがあります。『知覧からの手紙』はそんな本の一つでした。水口文乃さんというフリー記者が著したもので、2007年、新潮社から刊行されています。2008年頃、大阪の書店で「知覧」の文字が目に触れ、買い求めた記憶があります。当時、私は新聞社の外郭団体に勤務していて、忙しくしていました。16年間も放置していたのです。「ごめんなさい」と言いながら、本を開きました。 “Lapiz2024秋号Vol.51《巻頭言》井上脩身編集長” の続きを読む

Lapiz2024夏号Vol.50《巻頭言》井上脩身編集長

【Lapiz Online】2024年は、能登半島が最大震度7の激震に見舞われることから始まりました。ピーク時には能登の住民ら1万2834人が学校や公民館などに避難、多くの高齢者はじっと寒さに耐えました。テレビに映される被災地の模様を見ていて、29年前、阪神大震災の避難所で目にした光景がよみがえってきました。 “Lapiz2024夏号Vol.50《巻頭言》井上脩身編集長” の続きを読む

びえんと《京アニ事件で思う死刑の是非 002》Lapiz編集長・井上脩身

遺族「死刑は望まない」

『死刑執行された飯塚事件』の表紙(ウィキベテアより)

78人もが犠牲になるという凶悪事件で、禁固最長21年(延長があるとしても)という判決は日本ではおそらくあり得ないだろう。仮に死刑が廃止されたとしても終身刑以外の刑は考えがたい。事件の被害者や遺族がどう思っているかに
ついてネットで検索すると、朝日新聞の記者が2022年6月、事件に遭って負傷した女性を取材していた。 “びえんと《京アニ事件で思う死刑の是非 002》Lapiz編集長・井上脩身” の続きを読む

びえんと《京アニ事件で思う死刑の是非 001》Lapiz編集長・井上脩身

壁がまっ黒になったアニメーションのスタジオ(ウィキベテアよ り)

36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件で京都地裁は1月25日、被告男性に死刑を言い渡した。私は、死刑は廃止されるべきだと考える一人である。とはいえ、黒焦げになった京アニのスタジオを間近に目にし、何の理由もなくなく犠牲になった大勢の人たちをおもうと、死刑もやむを得ないのではとの思いが頭をもたげてくる。 “びえんと《京アニ事件で思う死刑の是非 001》Lapiz編集長・井上脩身” の続きを読む

Lapiz2024春号Vol.49《巻頭言》Lapiz編集長・井上脩身

大阪の書店で「サッコ・ヴァンゼッティ」の文字が目に留まりました。書棚から本をとりだすと、『「わたしの死を泣かないでください」サッコ・ヴァンゼッティ冤罪事件』という題がついていて、イタリア近現代史が専門の藤澤房俊
・東京経済大名誉教授が太陽出版から刊行していました。 “Lapiz2024春号Vol.49《巻頭言》Lapiz編集長・井上脩身” の続きを読む