現代時評《参議院選を控えて》片山通夫

ウクライナ侵攻

10日が参議院選の投票日。自公および維新など憲法改正派ともいうべき政党は今の国際情勢を「利用」して勝利を目指している。北朝鮮の核脅威、中国の台湾政策、ロシアのウクライナ侵攻などきな臭いどころではない状況で危険をあおっている。例えば筆者が知った限りでは北朝鮮のミサイルや核実験などに「厳重」な「抗議」は、従来指摘されているように、北京の北朝鮮大使館に、北京の日本大使館から、ファクスにより抗議文を送付》するにとどまっているようだ。
片やミサイルをぶっぱなし、今一方は「ファックスで抗議」というバランスの悪さに恐れ入る。
以上を踏まえて参議院選のポイントを考えてみた。 “現代時評《参議院選を控えて》片山通夫” の続きを読む

現代時評《勝敗分けるドンバス攻防戦》井上脩身

ロシアがウクライナに侵略戦争を始めて4カ月がたった。ロシアは現在東部ドンバス地方に戦力を集中させている。ドンバスを完全制圧して属国にするのがプーチン大統領の狙いであることは、「ネオナチストから守る」とのプーチン氏の発言から見て明らかである。この目的達成ために周到に用意されたプロパガンダの結果であることが、最近上映された映画『ドンバス』を見てわかった。ドンバス地方には「ウクライナ兵はファシスト」と信じて疑わない人が少なくないのである。ウクライナ軍が、NATO諸国からの兵器の支援を得て東部戦線のロシア軍を押し返すことができても、住民たちに植え込まれた反ネオナチス感情を払拭するのは難しい。ウクライナ側にとって、この戦争はいま極めて厳しい局面にさしかかっている。 “現代時評《勝敗分けるドンバス攻防戦》井上脩身” の続きを読む

現代時評《東アジア波高し」と煽る勢力が跋扈する。》片山通夫

台湾の霊峰ミサイル。量産?

6月13日の産経新聞(電子版)をみて驚いた。《「北京はミサイル射程内」台湾の立法院長が公言》とある。台湾の游錫?(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)は12日、台湾メディア主催のオンライン講演会で「われわれには北京を射程圏に収める雲峰ミサイルがある。中国が台湾を侵略する前によく考えてほしい」と発言した。中国が台湾の武力統一に踏み切った場合には北京を攻撃する可能性があることを強く示唆した。 “現代時評《東アジア波高し」と煽る勢力が跋扈する。》片山通夫” の続きを読む

現代時評《理不尽が死を招く!》片山通夫

クライナの首都キーウ(キエフ)近郊・ブチャの道ばたには、後ろ手に縛られ、頭部に銃弾を受けた男性が倒れていた。(インターネットから)

我々は毎日人が亡くなったニュースを目にする。しかしそれはこう言っては良くないが所詮他人事である。原因は様々だ。病気だったり事故の場合もあるだろう。災害も考えられる。本当に思わぬ所に危険は潜んでいる。このように死は必ずいつか訪れる。ほとんどの人は、日頃そんなことを考えずに生活している。機会があれば、神仏にお願いする程度だろう。

 

そうして人は生活を楽しみ、また苦しむ。

一方理不尽だが世の中には戦争と言うものがある。大抵の場合、戦争もしくは紛争は個人の意志とはかけ離れたところで発生する。今起こっているパレスチナとイスラエルの紛争は第二次大戦の結果だ。簡単に言うとイスラエル人に戦勝国である米英がお前たちの居場所を作ろうなどと安請け合いした。しかしややこしいことに、その場所は旧約聖書に掲載された場所だった。エルサレムである。
少し説明をしておきたい。何がややこしいかと言うと、エルサレムは世界最古の都市の一つで、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖市とされている。そしてユダヤ教を信じるイスラエル人はこのエルサレムを首都としている。最も国連ではこれを認めてはいない。アメリカのトランプ前大統領が現職の時、テルアビブにあった米大使館をエルサレムに移して物議をかもした。
一方のパレスチナ自治政府は東エルサレムを「パレスチナ国の首都」と主張している。
この三つ巴の混乱は、ひとえに第二次世界大戦後の英米の勇み足だったと筆者は考える。煮えたぎる坩堝に手を突っ込んだわけだ。

そして今年2022年2月24日、プーチンのロシアは隣国ウクライナに攻め込んだ。ウクライナは広大な面積を持つ農業国で、ソ連時代は「穀倉地帯」と大切にされた。世界の食料の何割かを生産していた。今、世界の食料価格が上がっているし、絶対量が不足しているという国連の報告もある。ロシアがウクライナの小麦を「強奪」しているという報道も見られる。エジプトに売る話を持ち掛けたが、エジプトは断ったらしい。「強奪された小麦=盗品」を買って世界から避難されるよりもというわけなのかもしれない。
ともあれ、ウクライナでは一般市民が理不尽に殺されている。派遣されて戦っているロシア兵も、それを迎え撃つウクライナ兵も理不尽に殺されている。

報道によるとロシア兵は「演習」と言われていつの間にかウクライナとの戦争に参加していたという、信じられない状況も起こっているようだ。無論「演習などではなく」実戦で、それも同じスラブ系の民族だと言われるウクライナ人が相手。厭戦気分も脱走する兵も理解できる。

エルサレムをめぐる対立もウクライナに侵攻したロシアも庶民にとっては理不尽そのものだといえる。ましてそのために殺された人にとっては。
今もその理不尽が世界で進行している。

エルサレム問題⇒https://is.gd/b66WKH
ウクライナ問題⇒https://is.gd/Ic4EwA

現代時評《ロシアのインフラが危ない》片山通夫

ロシアでは最近旅客機はソ連時代のイリューシンからエアバスやボーイングにシフトしてきた。筆者も以前はサハリンへ行くのにアントノフ24(写真)と言うバスのように小さいプロペラ機(ターボプロップ)で通った。ところがある時から夏季にはボーイングに変更になった。ユジノサハリンスクの航空会社の窓口の女性は「機材はボーイングよ」といささか得意げだったことを覚えている。アントノフはウクライナの航空機製造会社だ。ロシアの侵攻後にロシア兵が「史上最大の重航空機」にして「史上最も重い航空機」であり、「現存する世界最大の航空機」であるアントノフAn-225を大破させたことは記憶に新しい。

余談はさておき、ロシアのウクライナ侵攻で西側諸国によるロシアへの経済制裁で思わぬところで影響を受けているのがインフラだ。航空機を例にとってみると、先に述べたようにエアバスやボーイングと言った西側の機材が使われている。ところが経済制裁によって航空機のメンテナンス部品が入らなくなった。定期的に交換しなければならない部品が入らないと航空機の安全は保証できなくなる。これは重大事故につながる恐れがあることは自明の理だ。以前筆者がウクライナのキエフ空港でヘリコプターを待っていたことがある。チェルノブイリの取材だった。ところが一向に搭乗出来ない。2時間も待っただろうか。ようやく乗ることができたが、本来乗るはずの機材に不具合が生じたらしい。そこで同型機のパーツを外して取り付けるのに時間がかかったと言う。
今、ロシアではそのような事態があちこちで発生しているのではないかと思う。経済制裁は思わぬところで思わぬ結果を生む。ロシアの新幹線にも影響が出ていると朝日新聞が報じた。新幹線の車両を製造するドイツのシーメンスが、ウクライナ侵攻によってロシアから撤退した。この鉄道は、サンクトペテルブルグ出身のプーチンの肝いりでモスクワ⇔サンクトペテルブルク間を走る。朝日新聞によると「存続の危機」らしい。
このような思わぬ事態がロシアでも起こっている。いや戦争が長引き事態が今以上に悪化すれば、ロシアの社会は混乱を極め、国民のプーチンへの不満が爆発する可能性も大だ。

そういえばまだソ連崩壊の記憶も新しかった2000年頃のサハリンでは誰もロシアの銀行やルーブルそのものを信用していなかった。一方でソ連時代と違って海外へ行くことがそれほど難しくなくなった。そこで目を付けたのが外国人の財布だ。と言っても泥棒やすりをするわけではない。外国の旅行者にとって必要なルーブルを銀行でなく、個人で外貨と交換して「タンス預金」する。そしてそれを貯めていつかは外国へ出かけるという遠大な計画をロシア人たちはたてていた。しかしウクライナ侵攻以前の生活を知ってしまった庶民はどの様に感じるのかはわからない。

現代時評《ロシア軍のウクライナ国民排撃レイプ》井上脩身

ロシアがウクライナに侵攻を開始して3カ月余りがすぎたが、戦争が長引くにつれ、民間人に対する殺害などのロシア軍兵士の犯罪行為が次々に明るみに出ている。こうしたなか、信じがたい報道に接した。ウクライナの女性に性交渉を嫌悪させ、結果とし子供を産まなくなることを目的に、ロシア兵がレイプを行っているというのだ。レイプは女性の尊厳に対する卑劣な行為であるが、加えてウクライナ国民としての尊厳そのものを切り裂き、さらには将来生まれるであろう子供をも抹殺する″ウクライナ人全否定レイプ″である。プーチン大統領がいかにウクライナ戦争を正当化しようと、「悪魔の集団犯罪」というほかない。

この報道は5月10日付毎日新聞のコラム「火論」の中で取り上げられた。執筆者は2年連続新聞協会賞の受賞歴がある大治朋子記者。概要は以下の通りである。
ウクライナのメディアによると、兵士によるレイプは4月の前半に市民団体に情報が寄せられた被害だけでも約400件。首都キーウ(キエフ)近郊のブチャでは14~24歳の女性約25人が民家の地下で繰り返しレイプされてうち9人が妊娠した。ロシア兵は女性たちに、このレイプで今後、彼女らが性交渉を嫌悪するようになり、子供を持てなくするのが狙いだと語った。
大治記者はロシア兵のレイプ目的について、「『敵』の子孫の繁栄を阻むため」と表現。ウクライナ人の子供をつくらせないためにレイプしたというのである。
大治記者は「犠牲者の一部は殺されていない」としたうえで「レイプの傷が刻まれた女性をあえて生かすことで、人々に癒えることのない傷と恐怖を刻み込む。それこそがウクライナ社会そのものへの凌辱」と書く。
子供を産めないようにするためのレイプ例はあるのだろうか。調べてみると「アカイエス事件」に行き当たった。1944年、東アフリカのルワンダで50~100万人の市民が虐殺されたジェノサイドについて、国連安保理事会によってルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)が設立され、アカイエスという元タバ市長が裁かれた。アカイエスは影響力があり、住民は彼を尊敬、命令に従ったという。
裁判で被害者が「見つけ次第強姦する」と言われたと証言。多くの女性が繰り返し強姦されており、組織的なレイプであることが判明。アカイエスが「唯一の敵を除去するために協力するように」と住民に呼びかけており、実際、レイプの多くはタバ市庁舎の中や近くで行われた。
強姦された女性が、その結果子供を産むことを拒否するようになること、恐怖やトラウマから子供を産めなくなることから、強姦も虐殺などと同様、ジェノサイドの要素とされている。ルワンダのフツ族とツチ族との戦いのなか、フツ族がツチ族を抹殺の手段として公然レイプを犯したとして、アカイエスはジェノサイドの罪で終身刑が言い渡された。
ウクライナ人女性に子供を産ませないために行ったロシア兵の犯罪は、ルワンダでのおぞましい事件と基本的に何ら変わらない。大治記者は「ウクライナ社会への凌辱」と書いたが、「全女性への凌辱」でもある。愛の喜びである性を汚らわしいものにするという点で「人間への凌辱」であり、子供が生まれてこれないようにするという点では「未来への凌辱」でもある。
ルワンダ大虐殺ではアカイエスが裁かれた。ロシア兵のレイプについて本当に裁かれるべきは誰であろうか。
ロシアのプーチン大統領は4月18日、ブチャを攻略したロシア軍兵士の「英雄行為」をたたえ、名誉称号を与えた。英雄行為のなかに、レイプも入っているのであろうか。
プーチン大統領は5月9日の戦勝記念日の演説で「我々の責務はナチズムを倒すこと」と述べた。ナチズムがユダヤ人排撃思想であったことはまぎれもない。「ナチズム打倒」を名目にウクライナ国民排撃戦争に打って出たプーチン大統領。裁かれるべき者はだれの目にも歴然としている。

現代時評《プーチンの誤算》片山通夫

プーチン大統領(インターネットから)

抜き差しならないように見える。いやロシアの今のことだ。もっと言えばロシアのプーチンの今のことだ。先日5月9日、世界が注目する中で対独戦勝記念日を祝った。大方の予測を裏切って「ウクライナとの戦争」とか「戦略核攻撃の可能性」とかはプーチン大統領の口からは出なかった。
一方、報道などで伝えられるウクライナでのロシア軍の状況は決して芳しいものではないようだ。
《ロシア軍 将官クラス「7人死亡」報道の衝撃 専門家は「旧日本軍のインパール作戦と似た状況か」》と指摘する向きもある。プーチン大統領のイライラはおさまりうそうもない。 “現代時評《プーチンの誤算》片山通夫” の続きを読む

現代時評《ラスプーチンとキリル総主教》片山通夫

グリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチン Григорий Ефимович Распутин (ウイキペディア)

先ごろ、「カトリック教会のリーダーがロシア正教会のリーダーとウクライナの戦争について話をしました」と、CNNが伝えた。フランシスコ教皇がイタリアのメディアに明らかにしたもので、ロシア正教会のキリル総主教に「プーチンの言いなりにならないよう説得」したという。。40分の会談でキリル総主教は「我々は戦争をしたくない。ロシアは誰にも攻撃したことはない」。プーチンとキリル総主教は所謂盟友だと言われている。出身は二人ともサンクトペテルブルグ。キリル総主教は教皇との会談の冒頭、書面を片手に持ち、戦争を正当化する理由を20分間にわたって読み上げたという。これに対して教皇は「私はそれを聞き、『全く理解できない』と言いました。我々は国家の聖職者ではない。イエスの言葉で話さなくてはならない。総主教はプーチン氏の侍者になることはできない」、つまりプーチンの言うがままになるべきではないと話したということだったが、総主教は聞く耳を持たなかったようだ。 “現代時評《ラスプーチンとキリル総主教》片山通夫” の続きを読む

現代時評《第3次大戦と核戦争に言及するロシア》山梨良平

核のイメージ

今年2月24日までは世界は「まさか、攻め入らないだろう」と世界は考えていたように思う。一部の報道では「いや、プーチンは(ウクライナ侵攻を)やるだろう」と報道していたようだが。いずれにしてもロシアは隣国ベラルーシの助けを借りてウクライナに攻め込んだ。古来よく言われているように戦争を始めるのは簡単だが終えるのは難しい。今その岐路に立っているのがプーチンのロシアではないかと思うのだ。勿論そう考える理由がいくつかある。一つは諸々の報道から感じる「侵攻当初からの苦戦」だ。「64キロもの機動部隊の停滞」、「兵站が十分でなく食料は勿論、武器弾薬に至るまで不足」、「戦車の損傷」、「ロシア黒海艦隊旗艦「モスクワ」の被弾。沈没」「ロシア兵の損傷」など枚挙にいとまがない。

その陰でプーチンは「イライラしている」とか「部下を逮捕、降格」したとか、「ロシア軍の将軍の戦死が後を絶たない」という悪いニュースには事欠かない。おまけにプーチンは伝えられるところによると、プーチンはパーキンソン病を患っているようにも見える。そんな中プーチンは今月9日に毎年実施される「対独戦勝記念日」に向けて、このウクライナとの戦争に勝利宣言する予定だったようだ。しかしながら充分な戦果を挙げられない現状では勝利宣言などはとても無理だ。

東京新聞が次のように伝える。
> ロシア国防省は29日、モスクワの「赤の広場」で5月9日に行われる第2次大戦の対独戦勝記念軍事パレードで、核戦争などの際にプーチン大統領らが指揮のために乗り込む特別機イリューシン(IL)80が参加すると発表した。ウクライナ侵攻でロシア側への非難を続ける欧米をけん制する狙いとみられる。

またAFP「第3次大戦に発展の恐れ」 とラブロフ・ロシア外相が警告したと報道した。

まさかプーチンが核兵器を実際に使用することはないと思うが、2月23日の時点で、現在のようなウクライナの状況になるとはプーチンを含む世界中のだれもが考えていなかったのではなかろうか。ならば、核兵器を使うという危険もあながち妄想とは言えまい。現にウクライナの市民はロシア兵の蛮行に耐えているのだ。
誰かプーチンを止めなければならない。