現代時評《コロナウイルス狂騒曲》山梨良平

 

 

~終わりの始まりか~

それはチェルノブイリ原発事故から始まった1986年4月26日1時23分(モスクワ時間)に、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた。大事故だった。ソ連当局は当初この事故をひた隠しにしていた。抑え込もうとしていたのだ。

ことの発覚は意外なところからだった。 “現代時評《コロナウイルス狂騒曲》山梨良平” の続きを読む

現代時評《デマに惑わされるな!差別を助長するな!》山梨良平

 阪神大震災や東日本大震災などの大災害を経験し外国から暴動も何も社会不安になるようなことを起こさなかったことを称賛の的だった我々。ところがそのうちの一部だろうが、今回の新型ウイルスに関しては、ちょっと様子が違った。デマが飛び交っている。それも無責任なデマが・・・。ここではどのようなデマかは書かない。むろん誰しも死に足る危険のある新型ウイルスは恐ろしい。かく言う筆者も同様の思いだ。

韓国の話に飛ぶ。中国・武漢からチャーター機で帰国した人々は忠清南道牙山の警察人材開発院と忠清北道鎮川の国家公務員人材開発院に14日間隔離収容されて経過観察される。これらの人々を迎える牙山などでは反対運動も起こっている。

しかし一部住民がフェイスブックなどのSNSを中心に「我々が牙山だ(#We_are_Asan)」という帰国者歓迎運動を繰り広げ、注目を集めているというのだ。「一方の記事だけを見て各種のSNSに牙山と鎮川(チンチョン)を誹謗する書き込みが溢れており、牙山市民として心が痛む。私のように武漢からの帰国者を歓迎する牙山市民も多いということを示したくてこのようにメッセージ・リレーを始める」とメッセージを書き込んだEさんは語った。

そして「恐怖の中で震えていたはずの帰国者たちを温かく歓迎しよう。一緒にやってくれたら、牙山市民と鎮川郡民、武漢からの帰国者にとって大きな力になる」と付け加えた。
(この項ハンギョレ新聞 http://japan.hani.co.kr/arti/politics/35619.html)

WHO推奨の個人ができる対策があったので紹介する。

コロナウイルスは、飛沫感染(つばや咳)や接触感染によって拡散していることが分かっている。咳やくしゃみなどの飛沫が直接口に入ることで感染するケースや、ウイルスが付着したドアノブなどを触った後に、手で口元や鼻をこすったり、あるいは食べ物を手でつかんで食べたりして感染する場合などが考えられる。

日常生活の中で、多かれ少なかれウイルスが手についてしまうのはしょうがない。だからこそ、手についたウイルスを体内に取り込むのを防ぐために、まずは石鹸などを使った手洗いの徹底が第一の対策といえる。日本では、対策としてまずマスクをつけることが推奨される場合が多い。マスクによって鼻や口元を触りにくくなったり、くしゃみなどをしたときに飛沫が飛び散ることを防いだりできることは確かだが、マスクはエチケットとしての側面が強い。

(https://www.businessinsider.jp/post-206544)

マスクが品薄だといわれている。マスクは自分からの飛沫が飛び散ることを防ぐ。つまり周りにまき散らさないためのもの。買い占め無いようにしたい。それはハンカチや腕などで代用できる。それよりも手を十分に洗うことが重要と言われている。再認識したい。

次にデマ対策だが、SNSなどで出所不明の情報を安易に信じたり、拡散したりは絶対に避けたい。その情報が正しいものかどうか、例えば新聞やテレビなど信頼できる情報を発表しているマスコミや市町村、国の機関のHPなどで確認するだけの余裕を持ちたい。むろんそれでも間違いは起こる。その時は直ちに訂正したいものだ。
こんな時こそ冷静に対処したいものだ。そうでないと1923年関東大震災時の朝鮮人虐殺事件の二の舞に陥る。

現代時評《25回目の鎮魂》片山通夫

四半世紀前の1月17日、巨大な地震が淡路島、神戸そして大阪を襲った。早朝のことだった。そう、阪神淡路大震災と名付けられた地震である。筆者は当時ある病気でドクターストップがかかっていて、激しい運動(例えば走ること)などは禁じられていた。テレビや新聞で伝えられる惨状を見るにつけ、知人の安否などが気になっていたが、ペットボトル一本届けることができなかった。
筆者だけではないだろう。そんな思いの人々が日本、いや世界中におられたことと思う。以来、筆者はこの日に日本にいる限り、神戸を訪れることにしている。
特に何もするわけではないのだが、これは筆者なりの鎮魂の表現である。

現代時評《中村哲医師とハンセン病》井上脩身

NGO「ペシャワール会」の医師、中村哲さんが12月4日、アフガニスタン東部で銃撃を受けて亡くなった。この悲しい報道で、中村さんが1992年、毎日国際交流賞を受賞したさいの記念講演が私の脳裏によみがえった。当時パキスタンでハンセン病の治療に当たっていた中村さんが「ハンセン病への偏見は近代化に応じて強くなる」と述べたことが、強く印象として残ったのだった。中村さんが非業の死を遂げる1カ月近く前の11月15日、ハンセン病家族補償法が参議院本会議で可決した。我が国が近代国家になって以降、ハンセン病の患者とその家族が偏見、差別にさらされてきた歴史を重ねると、中村さんの指摘は差別の本質を鋭く射抜いているように思える。中村さんは後に用水路を引くなどの灌漑に全力を傾注。今回の事件にともなって、新聞やテレビではその功績業をたたえる報道が目立った。そのことに異存はないが、ここでは中村さんのハンセン病への取り組みを振り返りたい。中村さんが敢えて苦難の道に分け入った動機が近代への懐疑にあるように思うからである。 “現代時評《中村哲医師とハンセン病》井上脩身” の続きを読む

現代時評《私費での不倫は不倫ではない》山梨良平

安倍政権らしいニュースが飛び込んできたようだ。あまり一般紙=忖度大マスコミは報道しないが安倍首相補佐官と厚労省女性幹部が公費で「京都不倫出張」。菅官房長官は例によって和泉氏から報告を受けた内容として「公務として手続きを取った上で出張し、京都市内の移動は私費で支払われている。適切に対応したと聞いている」と述べ、「公私混同」との指摘を否定した。 “現代時評《私費での不倫は不倫ではない》山梨良平” の続きを読む

現代時評《官房長官も官僚も大変だ。「平穏に年を越せるのかな」と余計なお世話してみる》山梨良平

アフガンで銃撃事件が起き、中村哲さんが同行の護衛などのアフガン人とともに殺害された。とても残念な事件だった。アフガンの人々にとっても、我々日本人にとっても「希望の星」であり、誇りだった。安倍首相も「通り一遍のコメント」を出したようだが、なぜか心に響かないと思ったのは、私だけなのか…。 “現代時評《官房長官も官僚も大変だ。「平穏に年を越せるのかな」と余計なお世話してみる》山梨良平” の続きを読む

現代時評「政権との癒着を断て!」片山通夫

韓国にハンギョレ新聞という名前の新聞がある。ハンギョレとは「一つの民族」あるいは「一つの同胞」という意味だそうだ。

1987年6月の民主化宣言直後の9月に発刊準備委員会が構成され、翌1988年5月に創刊された。漢字を一切使わない紙面は読みやすさを追求した結果だと聞いた。また大手の新聞が当時は漢字交じりの縦書きだったのを、創刊号から横書きを採用した。

軍政時代にむんしゅかを主張してその職を追われた記者が中心となって設立し「書きたいことを書ける新聞」だった。 “現代時評「政権との癒着を断て!」片山通夫” の続きを読む

現代時評【虚偽自白を引き起こす特信条項】井上脩身

~滋賀・看護助手冤罪事件が教えるもの~

 入院患者の人工呼吸器を外したとして殺人罪が確定、服役した元看護助手(39)が「(初公判で)否認しても本当の私の気持ちではない」との上申書を捜査員に書かされていたことが最近になって判明した。元看護助手について今年3月、再審開始が決定、来年3月末にも無罪になる見通しだが、自白を維持させる目的で強要したとみられる供述書の存在が明るみに出たことで、冤罪の元凶の一端が浮き彫りになった。

 事件は2003年5月、滋賀県東近江市の湖東記念病院で、入院中の男性患者(当時72歳)が死亡しているのを看護師が発見。元看護助手が「院内を巡回中に人工呼吸器のチューブを外した」と自供し、殺人容疑で逮捕された。元看護助手は公判で無罪を主張したが懲役12年の判決が確定した。第2次再審請求審で大阪高裁は2017年12月、「自然死の可能性がある」として再審開始を決定、最高裁で確定した。検察側は今年9月、新たな有罪立証をしない方針を示し、再審で無罪になることが事実上決まった。

 自白維持のための上申書の存在がわかったのは今年10月。上申書は2004年9月の初公判の3日前、元看護助手が取り調べ担当の捜査員に滋賀刑務所の拘置スペースで書かされた。冒頭「(初公判で)嘘をついて否認しようと考えました」とあり、「今まで警察や検事さんに言ってきたのにと思うと、本当のことを言って一生かけて償っていきます」「もしも否認しても、それは本当の気持ちではありません」などとつづられている。(10月24日付毎日新聞)

 11月8日付同紙によると、元看護助手は捜査段階で「人口呼吸器のアラームが鳴ったが放置した」という趣旨の供述をしている。だが警察はこの供述書を地検に提出しておらず、「チューブを外した」との自供が有罪の決め手となった。

 チューブが外れたのでなく被告人が外した、と証明するには、目撃者がなければほとんどの場合自白以外に証拠はない。

憲法は「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」(第38条3項)と規定。ところが刑事訴訟法には「被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人の不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき情況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる」(第322条1項)との例外規定が置かれている。この条項で問題なのが「特に信用すべき情況」。「特信条項」と呼ばれ、「自白裁判の武器」になっている。

 元看護助手の裁判では、大津地裁判決は「自白に迫真性がある」と判示している。迫真な自白であるがゆえに「特に信用できる」というわけだ。この裁判でも特信条項が援用されたみるべきだろう。

 内田博文・九州大名誉教授(刑事法学)によると、この条項は「自白が任意にされたものでない疑いがあるとき以外は自白に証拠能力を付与」したもので、「裁判所にとって自白の任意性を否定するのは困難。(なぜならば)裁判官の検察・警察に対する仲間意識(裏返せば裁判官の必罰主義)があるから」(『治安維持法と共謀罪』岩波新書)と指摘する。平たく言えば、裁判官と検察官がぐる同然の司法界では、特信条項がまかり通っているのが実態というのだ。

 この事件では、再審請求審で弁護側が「患者は致死性不整脈で病死した可能性がある」との医師の意見書を新証拠と提出したことで、再審開始決定につながった。しかし、一審裁判官が自白について、誘導された疑いがないかなど厳密に判断していれば、無罪という結論が導きだされた可能性を否定できない。今なお冤罪が司法界にはびこっていることをいみじくも表した裁判といえるだろう。

 特信条項はすでに述べたように憲法に対する例外規定である。したがって極めて限定的な規定でなければならない。「特に信用すべき情況」という文言には何ら限定的な文辞はない。裁判官が信用しさえすればどんな自白も証拠にできる規定なのである。私はこの特信条項は憲法違反だと考える。

 冤罪は虚偽自白から始まるといって過言でない。その温床は特信条項である。冤罪をなくすため、特信条項は廃止されねばならない。

現代時評《流言飛語を信じるな!》片山通夫

 関東大震災の混乱の中で、官憲や民間の自警団などにより多数の朝鮮系日本人および朝鮮人と誤認された人々が殺害された事件があった。その時殺害された人々の数には数百名~約6000名と、非常に幅広い差がある。今もって確定できていない。

 そして2019年の今年、沖縄・那覇の首里城が炎上した。この稿を書いている11月4日午前現在、まだ原因は特定されていないようである。ただ、「正殿内に外部から侵入した形跡はなく、県警は放火の可能性は低い」と県警はみている。

 ところがインターネット上には、火災発生当初から「中国・韓国人による放火」「プロ市民の仕業」などというデマ情報があふれだした。そしてこのデマは拡散されてお祭り状態になっているという。また、韓国出張中の玉城デニー知事に関し「韓国に避難している。(知事が)指示したかも」という中傷も一時流れた。動画投稿サイトには「犯人は僕です」との投稿があり、炎上したが現在は削除された。

 いったいこの現象はなんなのだろう。筆者が思うところを書く。

朝鮮人の犠牲者数は、在日本関東地方罹災朝鮮同胞慰問班が官憲の協力を得られないまま調査を進めた結果であり、あまり信頼出来そうもないようだ。とまれ、実際に虐殺は起こった。以下ペディアから引用する。

 震災発生直後の9月1日午後3時以降、東京や横浜などで「社会主義者及び鮮人の放火多し」「不逞鮮人暴動」といったデマが発生していったが、デマの中には警察や軍が流したものもあった。これらの報道や伝聞による噂に接し不安を煽られた各地の民衆や有志によって自警団が結成されたが、中には地域の管轄警察の主導・指導で組織された自警団もあった。これら自警団の一部によって朝鮮人・日本人・中国人らが虐殺されていった。陸軍や警察はこの混乱を奇貨として社会主義者や労働運動家らの抹殺を画策し、10名が軍隊に虐殺された亀戸事件および無政府主義者が憲兵大尉らに殺害された甘粕事件が実行されたが、こうした「白色テロ」に対する責任追及や批判は低調だった。当時の社会にとっては治安維持と被災者救援活動の一環であり、軍や政府や警察が威信を取り戻したとして歓迎される状況になっていた。

 澤明の自伝『蝦蟇の油―自伝のようなもの』の中では、当時中学2年生だった黒澤の関東大震災時の体験が語られている。その中に黒澤の父親が長い髭を生やしているという理由で朝鮮人に間違われ暴徒に囲まれた話や、黒澤が井戸に書いたラクガキを町の人々が「朝鮮人が井戸に毒を入れたという目印」だと誤解し騒ぎになるというエピソードがある。

 一部では官憲の主導で自警団が結成されというから、おぞましい。

  ここに見るように「官憲の指導のもと」とまではともかく、今は「匿名で無責任にデマを飛ばせる」状況である。首里城の火災、台風19号などの自然災害などが起こった時に無責任なデマを飛ばす神経が分からない。一般に日本人は秩序正しくて優しく

思いやりがある民族だと定評がある。阪神淡路大震災時や、東日本大震災時の混乱時にも、略奪などの暴動は起こらなかった。外国人から見れば驚くほどの我慢強さと秩序正しさだといわれている。

 それが関東大震災時から、この首里城火災に至るまでの長い年月、日本人は自然災害にも耐えてここまで来た。それをあざ笑うようなデマでぶち壊しに「なろうとする危険がある。無責任だし、醜い。私たちは他人を貶めてほくそ笑むそんな人間ではなかったはずだ。 

 デマの拡散には気を付けなくてはならない。