ONCE UPON a TIME 外伝は次回の連載まで暫時お休みをいただきます。
ONCE UPON a TIME 外伝・日本で編《カビとの闘い#1》片山通夫
何しろ半世紀以上も写真を撮っていたのだから数だけは膨大なフィルムが残っていた。ただ残念ながら湿気とカビに侵されたフィルムもたくさんあった。いまだかな白状するとコロナ以前には見るのも恐ろしかった。そんな時、新型コロナウイルスが世界を襲った。外出禁止まがいの情報が錯綜する中で「この状態から抜け出せないなら」とフィルムの山に向かうことにした。エチルアルコールはコロナ以前に買ってあった。やわらかい綿にアルコールを浸してフィルムをこすってカビを落とした・・・つもりだった。何かのCMで見たのかもしれないが「頑固な汚れに…」というフレーズが思い浮かんだ。とれないのだ。カビが。そのうち意地になって擦る、こする…。 とれない…。汚れはがんこだった。
なんだかいい気分になってきた…。エチルアルコールで。つまりラリってきた。
急いでベランダのガラス戸を開いて換気した。
フィルムに生えたカビの頑固さよ。
ONCE UPON a TIME 外伝”グランマを読む人”片山通夫
グランマとは英語でgrandmotherを指すスペイン語である。カストロやゲバラがメキシコからキューバに攻め込んだ時に乗っていた中古のヨットの名前である。日本語に訳すとおばあちゃん。定員12名の本船になんと82名が乗り込んでのキューバ上陸だった。また無謀なことにカストロは事前に上陸を発表していたのでバティスタ政府軍に待ち構えられていたという。キューバ革命の詳しい情報はこちらを参照。
写真はそのグランマと名付けられたキューバ共産党機関紙を読む男。場所は旧ハバナの街角。(筆者撮影)
ONCE UPON a TIME 外伝 キューバ編 完
しばらくこのシリーズはお休みをいただきます。
ONCE UPON a TIME 外伝”ヘミングウエイ「老人と海」#3″片山通夫
とにかく無事に陸揚げ?したカジキを解体し山分けするというので、ボクも一切れ。・・・と言っても30センチくらいの大きな一切れ。ぶつ切りだから胴体の大きさの30センチ。とりあえずその塊をもって車に乗せてもらって・・・。
「何処へ行く?」
ボクは考えた。
「日本大使館へ連れてって」
この考えは正しかった。
つまり大使館には料理人も醤油もワサビもあるのだ。
大喜びしたのは大使館の日本人一同。かくしてボクは皆さんに喜ばれながらマグロの刺身を堪能できた。(この稿完)
ONCE UPON a TIME 外伝”ヘミングウエイ「老人と海」#2″片山通夫
ヘミングウエイの老人はとてつもなく大きいカジキマグロを釣った。
しかしボクたちはそんなに大きいカジキマグロではなかった。それでも優に2メートル以上はあった。胴体の周りも結構な太さだった。何しろ敵も必死なので、小舟を操り手繰り寄せるのは至難の技だ。ようやくカジキは船べりに近づいてきた。ご存じの通りカジキはその名の通り鋭い鼻を持っている。あんなので衝かれたらひとたまりもないことはボクにだってわかった。
ここでバットの登場だ。渾身の力でバットを振り下ろす。1回、2回、3回…。
遂にカジキは力尽きて狭い船内によこたわった。
ヘミングウエイもびっくりの釣りコンテストはこうして終わった。
帰港した。意気揚々と・・・。 港ではすでに釣り上げたカジキのサイズと重さを計って順位を決めていた。我々のカジキは等外。見れば周りは我々の2倍以上のカジキばかり…。
「駄目だよ、こんな小さいのは海に返さなくては・・・」
「せっかく釣ったのをリリース出来るか」ボクは思わず日本語で叫んだ。
第一あの暴れ方では無事にリリース出来るわけはない。こっちがリリースされちまう。
(5月1日に続く)
ONCE UPON a TIME 外伝”ヘミングウエイ「老人と海」#1″片山通夫
かくして、ボクはキューバに半年ほどいた。もちろんくまなくキューバの島を回った。漁船にも乗った。漁船で思い出したが、ヘミングウエイ記念とでも訳すのか「カジキマグロ釣りコンテスト」があった。ハバナの沖合の海で数十隻の小舟、ちょうど日本の渡し船(伝馬船)程度の小舟でカジキを釣るコンテスト。「老人と海」とは違って小舟にはエンジンがついている。無論トローリングで釣る。ボクが乗せてもらった小舟には二人の知り合いの漁師がのっていた。
「なんだお前か」と彼らが僕を歓迎してくれたことは言うまでもない。
野球で使うバットが2本小舟に転がっていた。聞いてみたら「釣れたらこのバットでカジキを撲殺する」らしい。危険な!
ハバナの町を遠くに眺めながら小舟は走り回った。その間、彼らはラム酒を呑む。ボクはと言えば、そんな余裕はなく、必死になって小舟を操った。つまり小型エンジンのハンドルとアクセルをもって「操縦した」。
突然小舟が傾ぐ。「ガツン」という衝撃。釣り糸を持っていたキューバ人が、激しく糸をを手繰った。まさにヘミングウエイの「老人と海」の漁師のように。糸は彼の背中に回してゆっくりと体全体で退いたり手繰ったり、そして徐々に魚を引き寄せた。ボクはと言えば小舟の進むスピードと方向がまったくわからなかったので、もう一人の漁師に席を譲った。彼は素早くボクの席に代わった。そしてボクには理解できない早口で二人で掛け合いを始めた。きっと漁師仲間だけに通じるやり取りだろうと思う。それともボクにはまだ理解できないスペイン語だったのかもしれない。
カジキは時にはジャンプし、また海に潜った。(続く)
*25日火曜日は井上脩身氏の「現代時評」です。
*”ヘミングウエイ「老人と海」2″は27日に掲載します。
ONCE UPON a TIME 外伝”ラム酒にまつわるショート・ショート”片山通夫
サトウキビを刈るキャンプで撮った写真を長々と掲載した。この辺りでサトウキビに関しては離れることにする。・・・と言いつつ最後にサトウキビを原料とするラム酒の話題。
その前に。キューバをはじめとするカリブ海の島々にはサトウキビは無かった。ラム酒の原料をカリブの島々へ持ち込んだのは、1492年にこの地に到達したコロンブス。彼が2度目の航海でカナリア諸島から持ち込んだことがきっかけで、サトウキビがカリブ海の島々に根づき、一大生産地となっていった。植民地の象徴であったわけだ。製造は砂糖の生産過程で絞ったサトウキビの搾りかすを蒸留して作った。キューバではスペインの植民地でバルセロナのワイン商バカルディによって創立された「バカルディ」という名のメーカーが世界的に有名。キューバ革命後はバミューダ諸島のハミルトンに拠点を移しメキシコなど旧スペイン植民地で製造されている。
参考
ラム酒カクテル:https://tanoshiiosake.jp/9696
余談だがカリブ海で活躍した海賊船にはラム酒の樽が積み込まれていた。
“パイレーツオブカリビアン”という映画がある。この映画に出てくる幽霊船『フライングダッチマン号』は、又の名を「さまよえるオランダ船」とも呼ばれ、ワーグナー作曲の有名なオペラ「さまよえるオランダ人」にでてくる船。オペラに詳しい方なら周知の話だ。
参考
「さまよえるオランダ人」あらすじと解説(ワーグナー )
:https://tsvocalschool.com/classic/fliegende-hollander/
日本では、19世紀に入ってから小笠原諸島でラム酒が飲まれるようになったとい言われている。生産が始まったのは20世紀終盤のこと。というわけで、あまり古くはない。現在は鹿児島県や沖縄県、静岡県、滋賀県、高知県などでも造られている。
ONCE UPON a TIME 外伝・写真特集” サトウキビ刈り #6”片山通夫
サトウキビは日本でいう鉈(なた)のようなものでたたききる。この鉈様のものをマチェーテと呼ぶ。特に自分用のマチェーテを大事にするという風でもない。空いているマチェーテを無造作に使うようだ。