Opinion《原爆を作る人々よ!》山梨良平

先月のことだ。ナガサキに落とされた原爆で犠牲になった人々を悼み、今後の平和をのぞむ式典が長崎平和公園で行われたことは記憶に新しい。

 

 

原爆を作る人々よ!
しばし手を休め 眼をとじ給え
昭和二十年八月九日!
あなた方が作った 原爆で
幾万の尊い生命が奪われ
家 財産が一瞬にして無に帰し
平和な家庭が破壊しつくされたのだ
残された者は
無から起ち上がらねばならぬ
血みどろな生活への苦しい道と
明日をも知れぬ”原子病″の不安と
そして肉親を失った無限の悲しみが
いついつまでも尾をひいて行く
これは23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんが綴った詩です。 (長崎市長・平和宣言から引用)

この詩を綴った詩人は残念ながら1974年に亡くなられた。彼女は45年8月9日、23歳の時に爆心地から約1、8キロにあった同校(長崎県立長崎高等女学校)で被爆。自身は助かったが、爆心地から約600メートル離れた自宅で被爆した両親と姉は、焼け跡から骨となって見つかった。(毎日新聞)
その後の半生はウイキペディアに詳しいのでそちらを参照していただくとして、長崎の被爆した一詩人が世界に、特に今年の式典をボイコットした国々に投げかけた怒りともあきらめとも言えない。
詩の最後に綴られた「いついつまでも尾をひいて行く」の一行に注目したい。

そして今なお「核兵器をつくる人々」や「それを保持している人々」そしてこの夏のナガサキに、日本を除く先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)の駐日大使が顔を見せなかった。理由は長崎市がパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルを招待しなかったことに反発し、格下の公使らの出席にとどめたのである。ウクライナ侵攻を理由に招待されていないロシアやベラルーシと、イスラエルを同列に置くことになると批判したことによる。

イスラエルが正しいのかパレスチナ人に道理があるのか、今はそれを論じる時ではない。ヒロシマの被爆者もナガサキの被爆者も戦争で核爆弾の被害を受けた我が国が率先して核兵器禁止条約に署名・批准することを求めていると言うのに我が国の政府はナガサキの平和式典をボイコットした国々と同列ともいえるのが悲しい。政治はいつでも国民の犠牲の上に立っている。

参考
詩人 福田須磨子 
広島平和宣言
長崎平和宣言