キューバに着いて、ほどなくしてボクはキューバの外務省へ出かけた。 居住登録をするために。変な話だがキューバ政府が指定したホテルにいるのにまるでボクが勝手に決めたホテルのような扱いだった。ボクの貧相な英語では間違っていたが、キューバでの身分証明書の発行手続きだった。ここで例の堀田氏の描写を思い出すことになる。
彼は「そうして女の子はオッパイが大きくて、お尻もまた立派で、部屋へ入って来るときには、まずオッパイから入って来て、出て行くときにはお尻がなかば永遠に残っている。……」と書いた。そのまんまのシーンが目の前で繰り広げられた。堀田氏の本に書かれなかったことがある。ボクはその外務省の係官が女性で彼女の髪が所謂カーラーでまかれていたことだ。ボクも決して生真面目な人間ではないがこれには驚いた。
つたない言葉で尋ねた。彼女はこともなげに「あなたのためではない。今日は私の彼と食事に行くのだから」とのたまった。そりゃそうだ。ボクとは初対面だ。しかしこれには感心した。つまり恋人のためには勤務中でもおしゃれの準備をするのだ。そういえば町でもそんな女性をよく見かけた。