Once Upon a Time 外伝 ”ボクは…フーテンだった。 ”片山通夫

フーテン族?
フーテン

モノクロームに目覚めたのにはわけがあった。忘れもしない1969年冬のことだった。ボクはそのころ進路に悩んでいた。結局踏ん切りがつかないでウロウロと、今でいうフリーターのようなことをしていた。当時は”フーテン”と呼んでいたかもしれない。谷崎潤一郎の小説”瘋癲老人日記”からきた言葉だと思うが定かではない。この瘋癲は就職活動をせず、何かしらの職業に就かない生活している人を指した。そういえば”フーテンのトラ”なんて映画もあった。そしてボクはまさしく当時はフーテンだった。寅さんの方がまだましかもしれない。少なくとも寅さんには定職と言えるモノがあった。最も彼の妹夫婦やおじ・おばにはあまり評判は良くなかったが。

つまり定職に就かなかったというより、就けなかった。いったい何をすれば良いのかも自分でわからなかった。いや、避けていたのだと思う。一度ある方の紹介で某広告代理店に紹介してもらったことがある。広告写真を撮るのかと一晩悩んでお断りした。