妻「どうすんのよ、話が違うじゃない。」
その日の夜、晋三氏は妻に責められていた。
何しろ昼の参議院予算委員会で「妻に聞いたらそんなこと言ってない」と啖呵を切ったまではいいが、野党は勿論、完璧に抑えていたはずのマスコミにまで総スカンを食った。食ったといえばあれだけ高い寿司をおごってやったのにとますます不機嫌になった。
何しろ一国の首相が国会の答弁で「妻に聞いたらそんなこと言ってないと言ってた」なんて、猿でもわかる通らん論理を吐いたのだからことはますます大きくなってゆく。
「話が違うと思うのはこの俺も同然だ」晋三氏はこう呟いた。
実際ノー天気な妻が、出先で何を言っているのかなんて夫たる俺が知るわけがないというものだ。せっかくサガワ一人にすべての罪をおっかぶせることができるかもしれないというのに、ノー天気な君が・・・・。
何しろ最近の世間の風当たりは強い。あれだけ寿司をおごってやったのに、読売や産経は・・・!!
《「途上国ならいざ知らず」「政治的責任明らかに」自民・派閥会合で批判相次ぐ》
この見出しどこの新聞だと思う!?産経だぞ。
《「書き換え可能性」5日に国交省から官邸に報告》・・・。ああ、知ってたよ!知ってて12日だと答弁したんだよ、読売さん!!
妻「サガワさんが来週に国会へ呼ばれるんでしょ。私も?」
晋三氏「馬鹿な。サガワで問題はストップさせる予定だ」
妻「そうは上手く行くかしら?私、国会で話してもいいわよ」
晋三氏「冗談じゃない!お前が国会で話すんだって?何を言うかわからんお前を国会に…。首相は自分の妻もコントロールできん男だって言われるだけだ」
妻「あら?コントロールしていたつもりなの?」
こう言った妻の顔には《アンダーコントロールって嘘じゃん》と書いてあったのを、晋三氏は暗い顔で見つめるしかなかった。