現代時評《そういえば12月10日は世界人権デー・徴用工問題を考える》山梨良平

いったいどうしたのか。良識ある人間ならこういう発想にはならないだろう。まして政府を、日本の国を代表している(と自負している)首相や外相は…。

政府間の約束事は、個人の人権(請求権)を奪えない。この常識さえ弁えないわが日本は、ほんとうに情けない。
(いうまでもないが、河野外相の所属する)外務省のホームページに世界人権宣言(仮訳文)というのが掲載されている(日英語)。その第八条には以下の条文が。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/1b_001.html

世界人権宣言 第八条

 すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。

日本政府や日本の大手マスコミは、この世界人権宣言をもう少しじっくりと読み直すべきである。先人が築き上げた崇高な精神は今も生きているのである。

個人が民間の会社を相手取って訴訟を起こして損害賠償を請求することを止めることはもちろん否定する権利は全くない。再度言いたい。なぜ我が国の政府やマスコミは「人権尊重」という観点から物事を考えることはできないのだろうか。

念のため、宣言の前文を転載しておく。

 人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、
 人権の無視及び軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信仰の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたので、
 人間が専制と圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権保護することが肝要であるので、
 諸国間の友好関係の発展を促進することが、肝要であるので、
 国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意したので、
 加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進を達成することを誓約したので、
 これらの権利及び自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするためにもっとも重要であるので、
よって、ここに、国際連合総会は、
 社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的及び国際的な漸進的措置によって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。

閣議で「安倍夫人は公人ではない」(2017年3月14日付)などと意味のないことを取り上げる暇があれば、この世界人権宣言を精読してから閣議に臨むべきだ!