現代時評《旭日旗考》山梨良平

旭日旗を巡る日本政府の対応が、日韓の間で大きな問題になっている。11日に韓国・済州島で行われた「国際観艦式」にあたり、自衛艦の旭日旗掲揚を自粛するよう求めた韓国政府に対し、日本政府が猛反発した。そしてご存知の通り、参加を取りやめた。

そもそも旭日旗とは「第二次世界大戦敗戦に伴い、日本の陸海軍は解体され軍旗としての旭日旗の歴史が一旦途切れるも、1954年(昭和29年)に発足した陸上自衛隊では旧陸軍時代の軍旗を元に考案された八条旭日旗の「自衛隊旗(連隊旗)」が、同じく同年発足の海上自衛隊では旧海軍時代の軍艦旗と同じ意匠の「自衛艦旗」が採用され、旭日旗の使用が復活した。この自衛隊旗と自衛艦旗の選定にあたり、保安庁の両幕僚監部は専門家に意見を伺うなどをしている。選定の庁議では艦旗が旧軍艦旗と同一であったことに懸念の声もあったが、保安庁次長の増原惠吉は「(両旗は)旭光を中心とした点で保安庁としての思想は一致している」としてそのままでの決定となった」とウイキペディアに記載されている。

ここに見るように、海上自衛隊では「艦旗が旧軍艦旗と同一であったことに懸念の声」もあったが「旭光を中心とした点で保安庁としての思想は一致している」ということで決まったようだ。そこには「旧軍の亡霊」のような輩が、昔日の夢を追うがごとくに、感傷で決めたのではないかと懸念する。

さてこの旭日旗がもつ歴史を思いうかべる必要がある。それは韓国や中国にとっては「侵略のシンボル」なのだ。言い換えれば「大日本帝国による韓国併合(植民地化)とアジアへの侵略戦争」のシンボルなのだ。

例えば
ヨーロッパを拠点にFIFAワールドカップやUEFA欧州選手権においてサッカーにおける人種差別を根絶するためにプロモーション活動を行っているfare (Football Against Racism in Europe(英語版))でも、スタジアムで禁止されるべき標章などをまとめた「Global guide to discriminatory practices in football」でも「かつて日本陸軍・海軍で使用された」、「第二次世界大戦の戦前や戦中における日本の軍国主義や植民地主義の象徴だったと見られている」、「特に韓国や北朝鮮や中国のファンや他の第二次世界大戦中にインパクトを受けた地域における他国のファンから差別的と考えられている」などの事実を前段に挙げた上で、後段にて「現在も海上自衛隊の象徴として使用されている」、「商業広告でも使用されている」などの事実を挙げながら「第二次世界大戦中に日本の軍事的な行動の影響を受けた国々によって現在も依然として差別的と見做されている」として、旭日旗を明記している。(ウイキペディア)ことでも明白である。

またサンフランシスコ講和条約締結の頃に時の吉田茂首相にたいして米国から艦艇の貸与を打診され、これを受け入れた。その際、貸与艦をどう運用すべきかを検討する秘密委員会が設けられ、山本善雄元海軍少佐が主席となり、旧海軍側から8名が参加したという。この答申によって、翌52年に海上警備隊が創設されたのだが、大賀元海幕長は当時をこう述懐している。〈この時、関係者が感激し狂喜したのは、かつての軍艦旗“旭日旗”が再び自衛艦旗として使えるように決まったことだ〉(「世界週報」時事通信社/2002年8月20・27日合併号) という記事も見られる。この狂喜した関係者が旧海軍関係者だったのは想像の域を出ないが、まず間違いないだろう。
つまり彼ら旧軍人たちは「夢をもう一度」という気持ちだったと思われる。その「夢の先」にはまさか「再びの戦争」はなかったのかもしれない。しかしそうでなかっても、実に無神経な決定だったといわざるを得ない。そこには「侵略した側」のデリカシーは感じられない。そこには独りよがりの狂喜しか感じられない。

それにしても安倍政権の精神状況も狂気に等しい。せめて隣国との摩擦は避けるべきだ。