アマテラスの誤算
【609studio】卑弥呼がアマテラスの化身だったということは日本史上最大の機密事項だった。天上神と地上の女王、よく考えればアマテラスが地上に降りるにはそれ相当の地位や場所が必要である。つまり太陽神であるアマテラスが鎮座するには、生半可なことは出来ない。国つ神たちは無論神武天皇も困ってしまった。そこで「化身」という手段を用いた。アマテラスも自らの化身なら納得も行く。
ここでアマテラスは世紀の誤算をしてしまった。それは「化身」がいるということの心地よさに酔いしれたのだ。考えても見てほしい。自分の化身が汗を流して必死に働いている間、ご本人はのほほんと暮らせるのだから、この上もなく楽で楽しいし、ある意味、麻薬のようなものだった。
神武をはじめ国つ神たちは、アマテラスの処遇に困り果て、あたかも高天原の河原で行った会議さながらに考えた。その結果、アマテラスをしかるべきところに、鎮座していただくしかないと結論付けた。高天原ではアマテラスは自らの意志で天の岩戸に御隠れになった。ここではみんなも意志で。
ではどこに?と言うことになり第11代垂仁天皇(紀元前69年~西暦70年)の皇女 ・倭姫命が、 アマテラスの御神霊を奉じる大神宮の候補地を求め、奈良県御杖村誌によると、御杖村ほか各地に候補地を求めた。そして最終的に現在の伊勢の地に鎮座されることになった。
これは体のいい幽閉なのだ。アマテラスは大いに誤算したのだ。卑弥呼と言う化身(身代わり)に仕事をさせたがために、自らは「祀り上げられて自由を失って」しまった。これじゃあ高天原の方が楽しかったとお思いになったかどうかはわからない。大いなるアマテラスの誤算である。(完)
伊