【LAPIZ ONLINE】何かのきっかけで行ってみたい場所ができることは日常ごく自然だ。初めての場所 名のある場所 思い出の場所など色々だがその内容、その時の必要性によって行動を起こす順位が決まってしまうが、その都度後回しにされる。
時間があれば、気が向いたらと、行きたいもしくは行く場所がある。
その場所の一番目は兵庫県加美町(現多可町)箸荷(はせがい)地区でその存在を知ったのは、2001年2月10日の新聞記事だった。
2001年2月9日 兵庫県景観条令に基づく住民協定制度第1号認定
《「な~んもない風景」次世代に》とあった。(兵庫県ホームページ)
この地区の有志16人が村づくり委員会を設立し、景観保存の自主ルールとなる住民協定を策定した。その主な内容は、建物は二階建てまで、コンクリート構造自粛、看板の設置、エアコン室外機、民家の増改築、水田のあぜ道整備等に一定の基準を設けるなど法的拘束力のないルールのもと新たにスタートを切った地域の紹介である。
254ヘクタール、60世帯282人の住むこの地区は当時は、コンビニはもちろん大看板もなかったというが、この記事から23年が経過している今、都会化の波は小波から大波、はては津波クラスまで強力である。少しの隙間から入り込んだ小波の後ろには、絶えず大波が控えている。
現状が気になる。
私の知る和歌山県内の一つの村(和歌山県葛城町天野地区)は、昔の農村の原風景が色濃く残る珍しさと村はずれの神社の静かな佇まいとの融合は幾度訪れても心が癒されたが、いつの頃かその神社の歴,史がメディアで紹介された事により訪れる人が急増、そして移り住む人、さらにその中には住宅の一部を改造し趣味の工房を兼ねた物販店を営む人、蕎麦店を新築する人、また不定期の音楽教室の開設など村の環境は激変している。
村へ通じる峠越えの道はトンネルが開通し、村なかの道路は大きく拡げられ はずれをバイパスが通りホタルが飛び交う小川の土手は、樹木が伐採され一部コンクリートに変わっている。
山間集落の都市化、原風景消滅の典型である。前述地区のような景観保存の事例は例外中の例外だ。自治体が景観保存の必要性を認め条例で保護し、国が法律でバックアップする体制を更に拡大・強化しない限り、決して再生できない。
日本の原風景の保存は難しい。