
太平洋戦争の敗色が濃厚となるなか、レイテ島決戦が始まったのは1944(昭和19)年10月20日だと新聞のコラムで知った。その日はわたしが生まれた日である。日本軍が占領していたフィリピンのレイテ島に米軍が上陸、激戦が繰り広げられた。日本軍は約8万人が戦死する壊滅的打撃を受けたが、この戦いではじめて特攻隊を編成、体当たり攻撃という異常な戦闘態勢を展開していく契機となった。レイテ戦について資料を集めると、おもいがけない本に出合った。『もうひとつのレイテ島』(発行・ブカンブコン)。慰安婦にさせられたレメディアス・フェリアスさんが、性暴力を受けた体験を著わしたもので、「日本軍に捕らわれた少女の絵日記」の副題がつけられている。玉砕と特攻という「聖戦」のかげで、日本軍が現地の人たちの尊厳を踏みにじっていたとき、わたしはこの世に生を受けたのであった。 “びえんと《レイテ島決戦の陰で泣く慰安婦 上》文・井上脩身” の続きを読む