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オオクニヌシの国譲り
【609studio】オオクニヌシが出雲の国造りを完成させた頃、高天原のアマテラスは、「稲穂の美しい葦原中国はわたしの子が治める国である」と言って葦原中国の支配権をオオクニヌシから奪おうとした。いや奪うなんて言葉が悪い。(出雲の)国を譲って貰いたいという意味だと思われる。それにしても乱暴な話だ。もっとも出雲の国自体があっちからこっちから土地を引っ張ってくっつけた国だから、あまりえらそうなことは言えない。言ってみれば朝鮮半島の新羅や越(こし、今の北陸地方)から寄せ集めた出雲を「譲って」と高天原のアマテラスが強請った。
何しろ地上の葦原中つ国がアマテラスの両親が作った国だから、遠慮もなにもあったモノではなかった。苦笑しながらオオクニヌシはアマテラスに国を譲った。高天原系の神々、つまり天つ神が「外交折衝」によってオオクニヌシから「稲穂の美しい出雲」を「譲れ」とばかりに強要したと言うエピソードが、高天原の神々が優越する「政治的意図」がうかがえる。
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前にも書いたかもしれないがアマテラスは筆者の最も苦手な学級委員長タイプだった。おまけに負けず嫌いでとびっきりの美人。女好きのオオクニヌシは決して逆らえなかった。6代まえのスサノオ同様。
オオクニヌシは仕方なく「天にも届くような、高く大きな社を建ててくれればそこで隠居する」と交換条件を出し、穏便に「国譲り」は終わった。さてその大きな社は高さが48メートル、一説には96メートルという高層の本殿だったといわれている。2000年に出雲大社境内から、直径約1.35mの巨木を3本組にして1つの柱とする巨大柱が発見された事からも、この規模の本殿があったと思われる。
高天原に住む、アマテラスをはじめとするいわゆる天つ神は、よほど出雲の国とオオクニヌシを恐れていたのだろう。そもそもは出雲の始祖とも言われるスサノオがいきなり、ヤマタノオロチという化け物をあっさり退治した。この一件からもスサノオやその6代あとのオオクニヌシはアマテラスにとって不気味な存在だった。一方的に恐れていたのかもしれないが。
出雲風土記や古事記、日本書紀などには「オオクニヌシはあっさりと国を譲った」ように書いてあるが、学級委員長タイプで疑い深くなってしまっていたアマテラスはじめ、高天原の神々は謀略で出雲と言う宝の土地と国をだまし取ったのではないか。いやそうではあるまい。アマテラスの神々しくも尊い姿に恐れ入ったオオクニヌシだったと思いたい。
この国譲りは一説には神武天皇のヤマト朝廷と出雲王朝の戦いと言われているようだが、誰も実況放送をしたわけでもなさそうなので、真贋のほどは何とも言えない。
不定期・続く