フィクション《アマテラスの誤算009》片山通夫

アマテラスのプライド

【609studio】話は前後するが、アマテラスは亡くなったイザナミの夫イザナギが禊(みそぎ)をしたその目から生まれた女神である。弟神にツクヨミ、スサノオがいる。このスサノオが問題児で亡くなった母・イザナミに会いたいと黄泉の国に行こうと駄々をこねる。その前に高天原のアマテラスに、いとまごいに出かけ、なぜか高天原で大暴れして遂には高天原から追放される。姉のアマテラスも諦めざるを得ない問題児だった。ただ筆者が思うにアマテラスは今でいう「学級委員長タイプだったのではないか」と。確かに美貌が備わり、神としての能力も他にあまたおられる神様に比してずば抜けていた。
欠点は「余裕と言うもの」がなかったのではないかと恐れ多いが思ってしまう。
さてそのアマテラスは出雲に降り立った弟神で乱暴者のスサノオをほとんど顧みなかったようだ。ところがスサノオは出雲に着いて、世のため人のために、ヤマタノオロチを退治しオロチの餌食になるところだったクシナダヒメを娶った。そして出雲の「須我」の地に社を立てて仲良く暮らした。

この6代後の神様がオオクニヌシで、今でいう出雲王国を築いた。
アマテラスはまさかあの乱暴者が出雲王国を築くまでに成長したことを素直に喜べなかった。ある意味度量の狭い神様だったのかもしれない。

高天原は神々の住まう世界である。一方の出雲は地上の人間社会だということができる。アマテラスもしくは天上の神々(天つ神という)にしてみれば、地上で繁栄している出雲は眼の上のたんこぶのようなモノで、地上の国つ神(天上の高天原に住む天つ神に対して地上の神々を言う)を近い将来平定する必要があると考えた。高天原に攻めてくるとは思わなかったが、「あの乱暴者のスサノオの子孫が出雲と言う土地で王国を築くなんて」と言うわけである。アマテラスのプライドが許さなかったようだ。

不定期・続く