フィクション《アマテラスの誤算005》片山通夫

神在月(かみありつき)

【609studio】今一つスケールの大きい話、わけのわからん話がある。出雲の国には「神在月」と言う月がある。出雲以外の国では「神無月」と呼ぶ。旧暦10月、全国の八百万(やおよろず)の神々が出雲の国に集まる月を指す。

貧乏神

・・・と言うことは、10月生まれで大阪(出雲ではない)生まれのボクなんぞ、神様が出雲へ出かけて留守の間に生まれたと言うことだ。神無月生まれのボクは神様のいない月の子供だったわけである。特に信心深いわけではないが、神様の留守中に生まれるとなると、いささか微妙な気分になる。しかしよくしたもので、「留守神」と呼ばれる留守番の神々が全国各地におられたという。簡単に説明すると、恵比寿(えびす)神、金毘羅(こんぴら)神、家の竈(かまど)や土地に根づいた「荒神(こうじん/あらがみ)」と言っ神様たちが留守番してくれているようだ。そういえばボクの家にも竈あり、薪で煮炊きしていた。大阪では竈のことを「へっついさん」と親しげに呼んでいた。だから10月の神無月でもよく考えてみれば大丈夫なわけだった。竈の神様がしっかりと留守神として守ってくれていた・・・はずである。 まさか貧乏神や疫病神ではあるまいと願うのみである。

不定期・続く