「からゆきさん」とは九州地方の西部や北部の言葉で、明治時代から昭和初期まで中国や東南アジアなど海外への出稼ぎのことあるいは出稼ぎに行った男女のことをいいます。島原地方(長崎県)や天草地方(熊本県)出身者が多く、長崎県の長崎港や口之津港などから海外に向かいました。特に出稼ぎだけでなく売られたりだまされたりして売春婦となった女性が『からゆきさん』(森崎和江著1976年)や『サンダカン8番娼館』(山崎朋子著1980年)などで取り上げられたことから「からゆきさん」というとこれらの女性を指すイメージが強められました。からゆきさんとして過酷な運命にさらされた女性の数は数万人、10~20万人、30万人とばらばらで確かな数はわかりませんが、背景には貧しさがあることを忘れてはなりません。実家に仕送りを続ける人も多かったでしょう。“ジャパゆきさん”という新しい言葉も思い出しますが、貧困は地域や時代を超える人類最大の悲劇かもしれません。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その157《からゆきさん》渡辺幸重” の続きを読む