現代時評《「えらいこっちゃ」の韓国戒厳令騒動》片山通夫

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、3日夜に非常戒厳を宣言してからわずか6時間後に解除すると言う「事件」が起きた。
これを受けて韓国の最高検察庁は12月6日「特別捜査本部を組織し、今回の非常戒厳関連事件に対して厳正に捜査する」と発表した。国会と中央選挙管理委員会に実際に戒厳軍が投入され、戒厳宣言と指示過程に軍高官などが関与した点を考慮した措置とみられる。つまり言葉は適切ではないが「上からのクーデター」と言うよりも、やはり大統領の専制だったのではないか。今のところ、冒頭に書いたように韓国の検察当局は正常な働きをしようとしていると見られる。軍事政権時代の韓国、いや身近に我が国の司法当局の「腰砕け状態」よりもまともかもしれない。決してユン大統領やその側近の現在まで、検察当局は公正だったわけではなさそうだ。例えばキム・ゴンヒ大統領夫人のブランドバッグ受け取り事件、ドイツモーターズ株価操作事件などが相次いで不起訴となっていることで、その公正性を疑われている。また警察もやはりチョ・ジホ警察庁長などが戒厳関連者として告発された状態であり、「セルフ(自分で自分を)捜査」という批判を受けている。(この項ハンギョレ新聞)

この辺りの韓国紙などの論調は日本の「忖度」マスコミとは違ってかなり手厳しい。もっとも国民性の違いもあるのだろうと思う。考えてみたらだいぶ以前の話だが、ある親しくしている韓国人から「稲作民族である日本人と、大陸の騎馬民族の違い」を説かれたことがあった。考えてみれば稲作は一定の土地に定住する必要があるが、騎馬民族は馬に乗って縦横に走り回るという特性があり、人間はもちろん馬にも食料が必要だから、目の前の土地から奪わなければならない。これは厳しい現実で常に戦うと言う精神を養わなくてはならない。これは厳しい。

またウイン大統領が「韓国野党は従北(北朝鮮に従う)勢力だ」と言う非難も今更の感があり、にわかに信じられない。こう考えれば、今回のユン大統領の戒厳令は彼自身や政府を守る行為だと理解できる。もっともそれが正しいのかどうかではない。
ただ大統領はそう判断したのではないか。勿論大統領に敵対する国会議員や国民もまた「往年の騎馬民族」だった。おとなしく引き下がるわけはないのだ。いずれにしても「えらいこっちゃ」の韓国であり、隣国である我が国も大きく影響を受けるだろう。無論、北朝鮮の動向も気になる。
そして周知のように、与党議員が大挙して本会議場から退出したため、大統領弾劾訴追案は廃案になった。今後の韓国内の動向、北朝鮮から目を離せない。