とりとめのない話《風と気配と地蔵さんと》中川眞須良 

その3  風向き地蔵(鵲地蔵)

かささぎ地蔵

【LapizOnline】気になる地蔵尊の一つである。世界遺産・仁徳天皇陵外周道路の西南角に西を向いて一体でひっそりと祀られているが、10年以上前にはこの場になかったお地蔵さんだ。 “とりとめのない話《風と気配と地蔵さんと》中川眞須良 ” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その147《収容所生活》渡辺幸重

収容所生活/生活風景(食事)(那覇市歴史博物館提供)

沖縄戦で米軍に占領された地域には捕虜や民間人の収容所があり、1945(昭和20)年の9月から10月頃には12か所の収容所で約30万人の民間人が米軍の管理の下に生活していたそうです。沖縄で米軍が最初に上陸した慶良間(けらま)列島では、米軍は座間味に司令部を設置するとともに座間味島や慶留間島(げるまじま)に収容地区を設けて住民を管理下に置きました。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その147《収容所生活》渡辺幸重” の続きを読む

現代時評《地震、雷、火事、おやじ》片山通夫

鯰に御札を貼る要石-出典:国立国会図書館デジタルコレクション

【609studio】かなり古いことわざだとは思っていた。「地震」は恐ろしいのは確かに一番だと言える。江戸時代から色んな地震に名前が付けられていた。国会図書館には「地震年表(江戸期:1605年~1868年)」と言うのが残っている。
そしてたいていが大暴れするナマズが描かれていて地震が起こる。科学的根拠はない。地震の規模は、マグニチュード(M)7.0~7.1 と推定されているがこれも定かではない。ナマズが「迷惑だ」と怒っているかもしれない。 “現代時評《地震、雷、火事、おやじ》片山通夫” の続きを読む

Opinion《原爆を作る人々よ!》山梨良平

先月のことだ。ナガサキに落とされた原爆で犠牲になった人々を悼み、今後の平和をのぞむ式典が長崎平和公園で行われたことは記憶に新しい。

 

 

原爆を作る人々よ!
しばし手を休め 眼をとじ給え
昭和二十年八月九日!
あなた方が作った 原爆で
幾万の尊い生命が奪われ
家 財産が一瞬にして無に帰し
平和な家庭が破壊しつくされたのだ
残された者は
無から起ち上がらねばならぬ
血みどろな生活への苦しい道と
明日をも知れぬ”原子病″の不安と
そして肉親を失った無限の悲しみが
いついつまでも尾をひいて行く
これは23歳で被爆し、原爆症と闘いながらも原爆の悲惨さを訴えた長崎の詩人・福田須磨子さんが綴った詩です。 (長崎市長・平和宣言から引用) “Opinion《原爆を作る人々よ!》山梨良平” の続きを読む

連載コラム・日本の島できごと事典 その146《大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判》渡辺幸重

大江健三郎著『沖縄ノート』

【LapizOnline】第二次世界大戦中の沖縄戦を説明するときよく使われる「集団自決」という言葉は戦後発行された『沖縄戦記 鉄の暴風』(沖縄タイムス社 編著)で太田良博が初めて使った言葉だそうです。戦争中に使われていた「玉砕」「自決」「自爆」などの言葉を言い換えたものですが、「自決」とは軍人用語であり、事件は住民の自発的行為ではなかったということから「強制集団死」という言葉が多く使われるようになりました。ただし、今回は「集団自決」という言葉を使った事件を扱うのでそのまま使うことにします。 “連載コラム・日本の島できごと事典 その146《大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判》渡辺幸重” の続きを読む

徒然の章《夏空》中務敦行

【LapizOnline】23,24年の空です。
恐ろしい空や雲、色のが溢れた夏でした。
見えないところで、竜巻や夕立が降ったことでしょう。
もうしぬかと思いました。
毎日欠かさず続けた1万歩も、7月のなかばからは7かけに。9月に入って1万歩になりましたが、7,8月には近くのイオンモールの冷房をの中で歩いたり、休みながらの散歩を。
また、大阪に行き地下街をグルグル歩いて1万歩を目ざしました。
6月に10個目のガンの手術を受けても、退院後一週間で1万歩を歩きましたが・・・
この夏の暑さには完敗でした。本当は乾杯!したかった。

とりとめのない話《峠越え「出屋敷峠」》中川眞須良

奈良県五條市の中心 R24号線 「本陣」の交差点を南へとれば通称十津川街道(R168)を地元の人は五新線と呼んでいる。賀名生梅林(あのうばいりん・左の写真)を右手に見、城戸の信号を過ぎたあたりから少し上り勾配がきつくなってくる。紀伊半島の大分水嶺(だいぶんすいれい)天辻峠(てんつじとうげ)の真下を貫く地上650m新天辻トンネルの入口が見えてくるのも間もなくだろう。少し雲が増え風切音が大きくなったが今日の天気予報に雨はないが過去に「峠の長いトンネルをでると土砂降り」の経験は数多い。 “とりとめのない話《峠越え「出屋敷峠」》中川眞須良” の続きを読む

編集長が行く《特攻のまち、知覧 02》 文・写真 井上脩身

鳥濱トメしのぶ知覧茶屋

 トメの味をしのぶ知覧茶屋

【LapizOnline】知覧をたずねた。特攻隊についての遺品や資料の大半は知覧特攻平和会館で保管、展示されている。
同会館の玄関を入ると、まず目に入るのが一式戦闘機「隼」の機体だ。私は戦争が目的(当然のことだが)である戦闘機を見るのは好きでない。しかし卓庚鉉が特攻出撃のため搭乗したのは隼だ。目をこらした。機体の銅には大きく日の丸がえがかれている。操縦席は地上から2・5メートルくらいの高さにある。もし女学生が出撃を見送りに来ていたら、その中にトメの娘がいないか、目を走らせたであろう。操縦かんをにぎったとき、アリランを口ずさんだだろうか。わたしはグレーの機体を見ながら、卓庚鉉に思いをめぐらしたのであった。 “編集長が行く《特攻のまち、知覧 02》 文・写真 井上脩身” の続きを読む

編集長が行く《特攻のまち、知覧 01》 文・写真 井上脩身

アリラン特攻隊の悲劇

映画『ホタル』のポスター(ウィキベテアより)

【LapizOnline】6月上旬、兵庫県東部の山あいでホタル狩りをした。静かな清流の上で光を点滅させながら舞う数十匹のホタルを目にし、心が和むおもいであった。一匹のホタルを手のひらにのせていて、ふと、映画『ホタル』のラストシーンをおもいだした。映画に登場するのはひとりの朝鮮人特攻隊員。彼は知覧から飛び立ち、南の海で散る。そのおもいはどうであったのだろう。「特攻のまち」といわれる鹿児島県南九州市知覧町をたずねた。

“編集長が行く《特攻のまち、知覧 01》 文・写真 井上脩身” の続きを読む

現代時評《サハリンでもあった朝鮮人虐殺事件》片山通夫

9月に入ると関東大震災時の混乱で相当数の朝鮮人が殺されたというニュースが各紙から流れる。東京都知事は今年も追悼文を出すことはなかった。その理由は既に新聞等でご存じだろうから、ここでは書かない。ただはじめて埼玉県知事からの追悼文が届き代読された。同じ日本の敗戦時、当時の樺太(現サハリン)で同じような虐殺事件が起こった。これは筆者がサハリンへ取材に通いだした頃に知った。事件の概略は下記の通りである。 “現代時評《サハリンでもあった朝鮮人虐殺事件》片山通夫” の続きを読む

LapizOpinion《Webメディアの台頭》一之瀬明

【LapizOnline】アメリカの話。 元メディア幹部のフィドラー氏は1980年代に「人々は紙に印刷された新聞を必要としないだろう」と唱えた。「新聞は持ち運びの出来る機器によって配信される。
そして人々はそれを読む」というわけだ。
印刷された新聞を買うという行為は、端末に配信されるニュースを読むのと同等だ。勢い印刷工場でインクを使って、いや紙そのものを輪転機にかけ、トラックで運び、町の新聞スタンドで販売すると言うスタイルはすでに遅れている形態だと言わんばかり。 “LapizOpinion《Webメディアの台頭》一之瀬明” の続きを読む

現代時評plus《8月に思ったこと》山梨良平

地蔵盆

【609stdio】毎年のことだが8月は思うことが多い。これは特に筆者だけではあるまい。思いつくままに書き出してみると、ヒロシマやナガサキと言った「重量級」への思い、敗戦と言った決して芳しくない出来事は当然ながら、これら「重量級」の思いはなかなかかんたんにはここで書くことは難しい。多くの人の命を虫けらのように扱った戦争と言う魔物が80年になんなんとする今もなお重く覆いかぶさってくる。 “現代時評plus《8月に思ったこと》山梨良平” の続きを読む

びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身

――飯塚事件にみる司法の犯罪――

犯行否認のまま死刑を執行された久間三千年さん(ウィキペディアより)

【LapizOnline】32年前、福岡県飯塚市で小学生の女児2人が殺害された飯塚事件の再審請求審で、福岡地裁は6月5日、再審を認めない決定をした。事件の犯人とされた久間三千年さんは、判決が確定後に死刑を執行されており、死刑後に無実となる初のケースでは、と期待されたが、裁判官は「死刑制度護持」という国家のメンツにしばられたのだ。私は以前、「びえんと」のなかで京アニ事件を取り上げたさいに飯塚事件にも触れ、「報復主義に基づく死刑制度を考え直すよう」求めた。もし久間さんが無実であるならば報復される理由すらない。再審をすべきかどうかを判断するにさいし、「誤った死刑執行ではなかったか」との思いが裁判官の頭の片隅にすらないならば、「無辜の救済」という再審の理念は空念仏になる。 “びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

現代時評《災害ニッポン、どーする?》片山通夫

【SDGs 609studio】台風10号(サンサン)が日本列島を縦断してようやく熱帯低気圧になり、消滅していった。当初、四国沖から紀伊半島、近畿辺りに上陸するかと思われた10号は西に方向を変え奄美を経て南九州に上陸し長崎から東に方向を変えて九州を横断した。
台風の進路もなかなか予測がつかない時代に入ったように素人ながら考える。
予測がつかないと言うことは、今回の10号のように長期間同じような場所に居座る事にもなる。ひいては豪雨の被害も大きくなり、弛んだ地盤は土砂崩れなどの被害を誘発する。 “現代時評《災害ニッポン、どーする?》片山通夫” の続きを読む

Lapiz2024秋号Vol.51《巻頭言》井上脩身編集長

『知覧からの手紙』の表紙

【LapizOnline】購入した本をつんどくにしたまま、読んでないことすら忘れてしまうことは二度や三度ではなく、何かの拍子に見つけてハッと恥じ入ることがあります。『知覧からの手紙』はそんな本の一つでした。水口文乃さんというフリー記者が著したもので、2007年、新潮社から刊行されています。2008年頃、大阪の書店で「知覧」の文字が目に触れ、買い求めた記憶があります。当時、私は新聞社の外郭団体に勤務していて、忙しくしていました。16年間も放置していたのです。「ごめんなさい」と言いながら、本を開きました。 “Lapiz2024秋号Vol.51《巻頭言》井上脩身編集長” の続きを読む

《Lapizとは?》Lapiz編集長 井上脩身

ベイルートにて:片山通夫

Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。