Webサハリン物語《episode#10 サハリンの朝鮮人#01》片山通夫

 

ユジノサハリンスクで

【609studio】いわゆる「鉄のカーテン」の向こう側の実態はなかなか把握できない。それは取材し始めた頃から感じていた。サハリン州は「閉鎖都市」だった。シベリアで外国人が行けたのは、ナホトカやハバロフスクなどごく少数で外国人立ち入り禁止だった。
サハリンの場合、多分、国境が日本やアメリカに接しているというのが理由だと思う。
外国人が自由に立ち入れないサハリンでは、「元日本人」だった外国人扱いの残留朝鮮人は域内(居住地から3キロメートル以内)でしか自由に移動できなかった。ある残留朝鮮人の姉は大陸の看護学校に入学するため、移動の手続きを早くから申請していたが、締め切り当日になってようやく移動許可が出た。それから交通機関のチケットを手に入れる手続きをしていては決して間に合わない。結局諦め、一晩泣き通したと聞いた。つまり彼女の家族は「無国籍者扱い」だったのだ。もっとも「無国籍」を自ら選んだ人々も多かった。近い将来祖国・南朝鮮に帰れると思って。何しろ朝鮮半島は朝鮮民主主義人民共和国なのだから。
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