とりとめのない話《風と気配と地蔵さんと》中川眞須良

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【LapizOmlime】「お摩り尊 空圓寺」

少し雲行きが怪しくなってきた。村なかの細い路地を何度も曲がって歩いていると 後ろからの風が 私を追越し すぐ先の門扉がいっぱいに開かれた古い寺に舞い込んで行った。その後を追うように又誘われるように中へ・・・。

少し奥に「苦しみを代わって受けてくださいます」と書き足された「お摩り尊」の木の札を従え少し高めの石の台座の上に赤い大きなよだれ掛けで高さ1メートル程の仏像が立っている。日を限って祈願すると願いがよく叶うと言われる「ひぎり(日限リ)地蔵」の名でも知られるとか・・・。頭 顔 肩 首 胸などよく摩られているのだろう薄っすらと光沢を放っている様子などは静かで清潔感が漂い、檀家や信者等地元の人々の信仰の深さが感じられる仏像と寺である。静かに数秒間目を閉じ心のなかで手を合わせた。

今、おさすり地蔵に手を合わせ挨拶をしているのに何処にも、触れずに帰るのはあまりにも失礼だと思い直し、艶のあるとびだした大きめの鼻の先端を人差し指の先で軽く触れてみた。ツルッとと滑るような感触だと思ったがそうではない。湿気を帯び人の体温ほどの暖かさの不思議な生きた地蔵さんである。驚き、思わず手を引っ込めたが指先のあの感触はしばらく残ったまま・・・。

短い訪問時間だが人の気配はまったくなく、帰り際また私よりも先に境内を出ていった風は先程より湿気を多く含んでいたような・・・。
雨が近い。

この寺 堺市美原区黒山   真言宗 空圓寺。