現代時評《親馬鹿ちゃんりん蕎麦屋の風鈴》片山通夫

【609studio】6月も半ばを過ぎて全国的に真夏日を迎えている。暑い日には筆者は蕎麦よりもうどんを好む関西人だが、落語に出てくる「時そば」を上方落語で聞いたことがある。「時うどん」と言うのだが、これはどうも頂けない。この場合はやはり蕎麦でないと・・・。
もっとも「時蕎麦」は冬の食べ物だ。

「親馬鹿ちゃんりん蕎麦屋の風鈴」とははて何のことなのかと思って調べてみた。

なんでも、徳川幕府が開かれ人々が多く江戸に集まってきた頃の話で、蕎麦屋が屋台や店の軒下に客の注意をひくために風鈴をぶら下げたのが始まりとか。
本来は夏の風物詩でもある風鈴が冬になってもぶら下げたまんま。風が吹くたびにチリンチリンとなる音を聞いて「親馬鹿だねえ、子供がいくつになってもかわいいと言ってる」と親馬鹿ぶりを笑ったと言う話からきたらしい。
そうは言ってもこれがうどんだったらと考えてみた。やはり落語の「時うどん」同様なんとなく間が抜けている。江戸っ子に馬鹿にされそうだ。

そんな馬鹿が大阪で幅を利かせているのが維新の市長と知事。はたして親に代わる市民や府民は放蕩息子の市長や府知事を25年万博の風鈴を「ちゃんりん」と鳴らせるか? そして放蕩息子たちの借金を笑って払えるか?
時代は70年万博当時とは様変わりしていると言うのに同じような出し物で稼ごうとしている。

来年に開幕を控えた大阪万博だが、ここにきて大問題が起こっている。
《爆発後に「他にはない」と断言したのに…可燃性ガス4カ所で発生 大阪・関西万博会場 「出ないわけないやん」 》と6月1日付東京新聞。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/330840
可燃性ガスが開催後に観客を傷つけるケースもと小中学生を無料招待も危うくなってきた。

筆者は1970年の万博の毎日某パビリオンで働いていた。あの時の盛り上がりには驚いた。
テーマソングの「世界の国からこんにちは」は総売り上げは300万枚を超えてミリオンヒット曲となった。歌手も三波春雄をはじめ坂本九、吉永小百合、山本リンダなど>8社のレコード会社が競作で発売300万の国民がレコードを買い、聞き、歌い大阪万博を盛り上げた。無論時代も現代のように「醒めた」時代ではなかった。経済も好調に向かっていたと言うバックボーンも違っていた。

当時1955年11月1日~1975年4月30日まで、米ソ冷戦時代の真っただ中でベトナム戦争と言う米ソ代理戦争が行われていた。そんな中で、米国やソ連(当時)のパビリオンは国のメンツをかけてか技術と文化を展示していた。また岡本太郎の太陽の塔は筆者にとっても驚きだった。お祭り広場もテーマソング通り、世界の国が、全国の自治体が、連日お国のPRを、文化を繰り広げていた。当時とは時代が違うという人もいた。しかし「違えば同じことの繰り返し」では盛り上がらない。口の悪い記者仲間は飲んだ勢いで「ゴミの山から出るのはメタンガス位だ」と口さがない。先に述べたがテーマソング「世界の国からこんにちは」は大人も子供も歌っていた。そして万博のテーマ「人類の進歩と調和」を目の当たりにした。

現在のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」という。会場はメタンガスが出るゴミの山を「夢洲」と言い、これも東京の「夢の島」というゴミで埋め立てられた二番煎じ。今更ながら「親馬鹿」では済まない火傷を負いそうだ。