とりとめのない話《あめんぼ》中川眞須良

亜綿棒:インターネットから

【LapzOnline】先日 大きな堀の堰から発する人工で一部敷石の水路の隅の水溜り(2畳程) に数匹の成長途上のあめんぼをみつけた。間近でじっくりと観察するのは何十年ぶりだろう 子供の頃捕まえたときのあの醤油が腐ったような臭いを思い出すと思わず半歩引き下がってしまう。日照りで流れがなくなり狭く浅いこの溜まりに閉じ込められた格好だ。水量が減り更に干上がる寸前になるとあめんぼ達はどうするのだろう。

成虫(親)はすきなところへ飛び立つであろうがその大きさの半分にも満たない子供達は?  図鑑等に問うてみたが確答はない。自然界における昆虫の生態の原則(?)「親が飛べば子供も飛ぶ」に従っておくことにする。更に図鑑のあめんぼの解説の一部に句の夏の季語とあるのを知ると本題は自然とその方向に向かってしまう。

あめんぼ(水馬)を詠んだ句に記憶がないので探してみた結果、各作者に共通している感覚では?・・・と思われる三つの句に出逢えたので列記すれば・・・

この町の風より知らず水馬   井桁白陶(いげた はくとう)

一生二生空も飛びたい水馬   松本恭子

水馬松の花粉にゆきなやむ   軽部烏頭子 (かるべ うとうし)

この句の三作者 水馬(あめんぼ)は飛ばない あるいは飛べない事を前提とされているのではと小さな疑問が残る。

夏場、比較的狭い水域(水溜り ハス池 止まっている噴水池等)を注意深く観察していると時々飛翔の瞬間に出会える機会がある。さらにあめんぼには悪いが小さい棒切れで水面を叩くように少し追っかけてやると急に立ち止まり背中の羽根をゆっくりと拡げ終わると素早く飛び去る2匹を確認できるかもしれない。しかしこの瞬間に出会えるのは稀だ。緊急避難時以外 どのようなときにどれだけの距離を飛ぶのかは分からない。

この先 あめんぼの飛翔を詠んだ句に 偶然出会える日があるかも・・・。