現代時評《袴田事件にみる司法の人権意識の欠如》井上脩身

袴田事件について検察側は7月10日、再審公判で有罪を立証することを明らかにした。シロであるはずの袴田巌さんをクロに引き戻そうというのである。再審請求審で裁判官が「証拠の捏造」を指摘したように、この事件の本質は、捜査当局が証拠をでっちあげ、袴田さんを死刑台に送ろうとしたことにある。原審の静岡地裁では主任裁判官がでっちあげを疑い、袴田さんを無罪とする判決文を書いたが合議でひっくり返り、死刑判決になるという異例の展開をたどった裁判である。本来、原審で無罪になるべき事件が、事件発生から半世紀以上も過ぎたいま、なぜ再審で白黒を争わねばならないのか。わが国の司法には人権意識が欠如しているため、とみるほかない。 “現代時評《袴田事件にみる司法の人権意識の欠如》井上脩身” の続きを読む