ヘミングウエイの老人はとてつもなく大きいカジキマグロを釣った。
しかしボクたちはそんなに大きいカジキマグロではなかった。それでも優に2メートル以上はあった。胴体の周りも結構な太さだった。何しろ敵も必死なので、小舟を操り手繰り寄せるのは至難の技だ。ようやくカジキは船べりに近づいてきた。ご存じの通りカジキはその名の通り鋭い鼻を持っている。あんなので衝かれたらひとたまりもないことはボクにだってわかった。
ここでバットの登場だ。渾身の力でバットを振り下ろす。1回、2回、3回…。
遂にカジキは力尽きて狭い船内によこたわった。
ヘミングウエイもびっくりの釣りコンテストはこうして終わった。
帰港した。意気揚々と・・・。 港ではすでに釣り上げたカジキのサイズと重さを計って順位を決めていた。我々のカジキは等外。見れば周りは我々の2倍以上のカジキばかり…。
「駄目だよ、こんな小さいのは海に返さなくては・・・」
「せっかく釣ったのをリリース出来るか」ボクは思わず日本語で叫んだ。
第一あの暴れ方では無事にリリース出来るわけはない。こっちがリリースされちまう。
(5月1日に続く)