そんな折に日本の岸田首相は「閣議決定」という無謀な手で、敵基地攻撃能力を持つことにし、「防衛力」という「戦力」に「先制攻撃」を付け加えた。敵基地攻撃能力とは、弾道ミサイルの発射基地など敵国の基地や拠点などを攻撃する装備能力。 反撃能力ともいう。戦後の平和主義から一変した政策である。近隣諸国は次のように反応した。朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省報道官は20日、日本政府が安全保障関連3文書を改定し「反撃能力」(敵基地攻撃能力)保有を打ち出したことに反発し、「どれほど懸念し、不快に思っているかを実際の行動で示し続ける」と軍事挑発を示唆した。一方、金与正朝鮮労働党副部長は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実戦を模した「通常の角度」で発射すると威嚇した。また中国外務省の汪文斌副報道局長は「訳もなく中国の顔に泥を塗ることに断固反対する」と表明。「中国の脅威を誇張して自らの軍拡の言い訳とするたくらみは思い通りにならない」と反発した。
ロシアがウクライナに侵攻した初期のころ、4月14日にロシアの議員が「ロシアは北海道の権利を有している」と発信したことがあった。無論政府は根拠がないと一蹴した。
そのことは筆者もあまり重要視出来ないが、ウクライナに侵攻した事実を鑑みると、簡単に無視できる内容ではない。最も近い話では、先の大戦で我が国は樺太(北緯50度以南)を失った。当時のスターリンは北海道の半分を割譲せよと主張したがアメリカに一蹴された事実がある。またそれ以前に樺太アイヌを北海道に移住させたが、彼らはもともと樺太の先住民だった。その先住民がいる北海道はという屁理屈なのかと思うが、ウクライナ侵攻が現状と違って、ロシアにとって順調に進んでいれば、この「北海道はロシアのもの」
という主張も将来起こりうる可能性が充分あると危惧する。
なぜなら。「我が国が先制敵基地攻撃能力」を保持するということは、当然「敵も保持して当たり前」と考えられる。ロシアは現状でウクライナに対して「核の使用」をほのめかしている。
《プーチン大統領、核先制使用は可能と軍事ドクトリン修正「検討」も 》とBloomBergが伝えた。
勇ましく閣議だけで重要な国民の運命を左右することを決定した岸田内閣だが、果たしてことの重要性をどこまで理解しているのだろうか。
《日本の防衛体制強化をロシアが批判、「抑制のきかない軍事化」 》とはローター電が伝えたロシアの反応。
続いてロシアは
*前例のない軍事力増強へ突き進む
*平和的な発展を明確に否定
*必然的に新たな安全保障上の課題を引き起こす
などと指摘した。
このようなロシアの指摘が単なる外交上の反応なのかどうかはわからない。しかし近隣国であり、北海道に接しているともいえる(サハリンと宗谷海峡を隔てて43Km)大国ロシアの「抑制した反応」は北朝鮮の反応よりも「すごみ」を感じるのは筆者だけなのか。
地政学的に言えば遠いアメリカを相手にするよりも、ロシアや中国、朝鮮半島の国と交流を深めて平和的に交流を深めることの重要性を思い出したい。その昔、文禄・慶長の役という戦争があった。簡単に説明すると豊臣秀吉が何を思ったのか、大明帝国の征服を意図し大名たちを糾合して遠征軍を立ち上げ、明国の冊封国である朝鮮に攻め入った。しかし明国の応援で膠着状態に入った両軍は厭戦気分の中、秀吉の死で日本軍は引き上げ戦いは終了した。その後家康は朝鮮との修好に努力し、対馬藩に朝鮮との交渉にあたらせた。
その時の対馬の朝鮮方佐役(朝鮮担当部補佐役)を拝命した雨森芳洲は《外交の基本は「誠意と信義の交流」である》と説いた。
つまり近隣国との外交は誠意と信義の交流が重要だと言うわけで、先制敵基地攻撃などとはまったく相いれない考え方である。 (完)