現代時評《それでも戦争しますか?》山梨良平

安倍国葬が終わった。世論調査で見れば国葬反対が多くを占めた珍しい現象だった。端的に言えばかなり無理をした国葬だった。安部氏が政権を担っていた時代、我が国はひたすら戦争に向かっていた。
9月10日の日刊ゲンダイに作曲家が書かれた「三枝成彰の中高年革命」と言うコラムに「日本はあらためて戦争放棄を宣言すべきだ」と書かれていたのが目に留まった。そこに書かれていた内容がほとんど私の考え方と似ていたので「ふんふん成程」といちいち納得できた。
我々が、日本の所謂タカ派の政治家がやれ防衛だ、防衛費の増強だ、いや敵地先制攻撃はどうだ?挙句に核の共有だなどと一見勇ましい。とにかく攻めることに力点を置いている。仮想敵国は北朝鮮であり、中国であり、最近はウクライナに侵攻したロシアもその仲間入りした。

しかし前述のコラムにも書かれているように《中国の国土は日本の26倍で人口は11.2倍。張り合うだけ無駄だ。日本が太平洋戦争で惨敗した米国も同じく日本の26倍、西海岸と東海岸で時差が3時間もある大国だった。中国とまた同じことを繰り返すのは愚の骨頂である。ストックホルム国際平和研究所の「世界の軍事費」(2021年)によると、日本の防衛費は世界で9番目の規模である。安倍元総理の“遺言”である防衛費の国家予算2%への増額がなされれば11兆3000億円となり、世界第3位の軍事国家となるが、第2位の中国の37兆円には遠く及ばない(第1位は米国の102兆円)。いくら背伸びをしても、スケールの違う中国にかなうはずがないのだ。万が一戦争となれば、必ず大勢の国民が死ぬ。防衛推進論者には、そこをどう考えているのか聞きたい。》

みすみす負ける戦争をする馬鹿がいるとは思えない。ウクライナに侵攻したプーチンも今のようなことになるとは考えもしなかっただろう。なんでも数週間で首都を攻略する予定だったようだ。まったくの目論見違いであり、予備役を30万人招集するという。彼らの食料など兵站の準備は出来ているのだろうか。
先の戦争でも日本もほとんど兵站に関して考慮しなかったといわれている。簡単に言うと「現地調達」。
平時の今も昨年度のカロリーベースの食料自給率38%。およそ4割だった。今のウクライナの状況を見ても決して農作物を生産・配送できるとは思えない。国民はまた学校など校庭に畑を耕し「欲しがりません、勝つまでは」と勇ましく我慢するのみなのか。
そういえば農業、林業、水産業など第一次産業のほとんどを我が国は輸入に置き換えている。たった4割弱の自給率でどれほどの期間持つのかわかっていないのではないか。おまけに種子は愚かにも外国産になってしまった。

もう一つは燃料の問題。戦争を遂行してゆくには航空機をはじめとする燃料や物資を運ぶトラックや船舶の燃料などもどれほど必要か不明だ。資源のない我が国の石油の備蓄は民間を含めて233日程度。およそ7か月強の備蓄がある計算である。戦時にはこの倍の期間に食い延ばす言うことになれば約一年。一年以内に戦争を勝利に持ってゆかなければ燃料は枯渇する。制海権を確保してタンカーの航路を確保できなければならないわけだ。これは残り6割の食料を確保する道でもあるが果たしてうまく行くかどうか。

9月20日の毎日新聞に「原油価格の高騰により自衛隊の燃料購入予算が枯渇する見込みとなったため、予備費約507億円を不足分の補填(ほてん)に充てると発表した。」というニュース。無論予算措置をとって予備費から拠出する。問題はそこではないと筆者は感じた。もし戦争に巻き込まれたら、政府は「いちいち予算措置なんて面倒なことはしないで戦費として」無制限かつ秘密裏に拠出するだろう。けど燃料を買うことができるのかはなはだ疑問だ。

最後に、万一日本が戦場になる場合、まず原発の存在が足かせになる危険が高い。これは他の種類の発電所であっても同じではあるが、電気を作れないだけでない危険が原発にはある。放射能の怖さは口には表せない。ヒロシマやナガサキ、そしてフクシマを経験で知っている国民なのに。
こうなればドラえもんの「タケコプターだけでなく、なんでもポケット」が欲しくなる。

それでも戦争しますか?