10日が参議院選の投票日。自公および維新など憲法改正派ともいうべき政党は今の国際情勢を「利用」して勝利を目指している。北朝鮮の核脅威、中国の台湾政策、ロシアのウクライナ侵攻などきな臭いどころではない状況で危険をあおっている。例えば筆者が知った限りでは北朝鮮のミサイルや核実験などに「厳重」な「抗議」は、従来指摘されているように、北京の北朝鮮大使館に、北京の日本大使館から、ファクスにより抗議文を送付》するにとどまっているようだ。
片やミサイルをぶっぱなし、今一方は「ファックスで抗議」というバランスの悪さに恐れ入る。
以上を踏まえて参議院選のポイントを考えてみた。
NATOの拡大
先月29日に米CNNが次のように伝えた。
「トルコが一転支持、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟」。つまり北欧2国のNATO加盟へ大きくはずもがついたことになる。
はたしてロシアがどのように出るかは今の時点(6月29日午前・日本時間)では不明だ。ただ強烈に非難することと思える。北欧は過去にロシアに悩まされてきた。
例えば、2022年3月2日、核弾頭を積んだロシアの爆撃機が欧州連合(EU)領空に侵入した。スウェーデン国防省は「意図的な行為」であり「無責任」であると非難した。領空侵犯してスウェーデンに侵入したロシア機は核兵器を搭載しており、首都ストックホルムを脅かすための意図的な動きであった。またフィンランドは第二次大戦後はソ連の影響下に置かれ、ソ連の意向により西側陣営のアメリカによるマーシャル・プランを受けられず、北大西洋条約機構(NATO)にも欧州諸共同体(EC)にも、ソ連中心のワルシャワ条約機構にも加盟しなかった。ソ連邦の崩壊後には西側陣営に接近し、1994年には欧州連合(EU)加盟に合意。2000年には欧州共通通貨ユーロを北欧諸国の中で初めて自国通貨として導入した。2010年代にクリミア・東部ウクライナ紛争などでロシアの脅威が高まったため、西側への接近を加速している。2017年にはスウェーデンとともにイギリス主導でNATOや国際連合に協力する合同派遣軍への参加を決めた。一方ノルウェーは1949年には現加盟国としてNATOに加盟している。
地政学的にロシアにこのように近いスウェーデンやフィンランドは過去にロシアの影響を大いに受けてきたわけだが、今回のプーチンのウクライナ侵攻によって、微妙な政治的バランスを保ってきた両国は一気に西側に寄ってNATOに加盟を果たすことになる。トルコとの間にどのような妥協があったのか、現在のところ不明である。
またロシアの飛び地・カリーニングラードという厄介な地域がある。周りはNATO加盟国だけ。先日もEUの対ロシア制裁の一環でカリーニングラードへの輸送を閉ざした。
いずれにしても対するロシアは黙ってはいまい。プーチンの性格から言ってもこのままでは済まないと思う。
第二のウクライナがバルト3国に広がりとなると、NATO対ロシアという図式になり、それに中国が南アジアや台湾で積極的な軍事活動をすれば、これはもう第三次世界大戦。
ロシア・シベリア、サハリンから睨む北方領土を含む北海道
「公正ロシア」のミロノフ党首が4月1日「一部の専門家によると、ロシアは北海道にすべての権利を有している」と発言した。またロシアの極東開発を統括するトルトネフ副首相は4月25日、北方領土について、独自の開発や投資をさらに進め、「ロシアのものにする」との意向を示したと報道された。これらの発言はいずれも「ウクライナ侵攻後」のことだ。数日でウクライナを陥落させることができると考えていたプーチンの思惑が外れたのちの発言だ。つまりロシア国民や軍人の士気を高める狙いがあるとみる。
これらのロシア側の発言で「占めたとばかりに国民を引き締める発言」が安部・麻生元首相を中心に盛んになってきた。今まで旧民主党政権時代を除いてほとんどの戦後政治を率いてきた自民党が、一向に勉強しなかった反省もなく、中国や北朝鮮、ロシアという隣国相手にまともな外交関係を持たず、いたずらに国民に危機を煽る手合いを信じることはできないと思う。
せっかく「ウラジミール、シンゾー」と呼び合える中で今回の「北海道に全ての権利有する」との発言に黙してず語らない「シンゾー」の心境を知りたいものだ。
国家の危機は意外な展開を見せる。せめて日ごろから周辺国との親交外交を努めて欲しかった。
しかし、もう遅いかもしれない。
参議院選がまじかに迫っている。
ロシアのウクライナ侵攻に例を見ても仕方がない。もし国民に先のこと、今のことそして将来のことを考える余裕があるなら、過去のしがらみで、威勢のいい言説で候補を選ばず、平和で文化的な生活ができるような約束をしてくれる政党もしくは政治家を選びたいものだ。
ロシアでも東欧でも南米でもアフリカでも見るがいい。人々は国を捨てて逃げ惑う。日本は基本的に亡命を認めない国だ。そんな国の国民が他国で受け入れられることはない。
政府にコントロールされる政治ではなく、政府をコントロールする憲法と国民でありたい。