現代時評《プーチンの誤算》片山通夫

プーチン大統領(インターネットから)

抜き差しならないように見える。いやロシアの今のことだ。もっと言えばロシアのプーチンの今のことだ。先日5月9日、世界が注目する中で対独戦勝記念日を祝った。大方の予測を裏切って「ウクライナとの戦争」とか「戦略核攻撃の可能性」とかはプーチン大統領の口からは出なかった。
一方、報道などで伝えられるウクライナでのロシア軍の状況は決して芳しいものではないようだ。
《ロシア軍 将官クラス「7人死亡」報道の衝撃 専門家は「旧日本軍のインパール作戦と似た状況か」》と指摘する向きもある。プーチン大統領のイライラはおさまりうそうもない。

そもそもウクライナ侵攻の理由がなっていなかった。最初に聞いたときは「最近、ウクライナでネオナチの台頭が顕著なのか?」と思った。しかしながら、いずれの国にも生まれていた極右の思想の持ち主グループの程度だと理解していた。
ニューズウィークの報道を引用する。
⇒《ウクライナにネオナチ党があるのは事実。東部の親ロ派と戦う右翼のなかにもネオナチがいるが、影響力は限られている。ロシア兵にかつ てのナチスドイツとの戦いを想起させ士気をあげようとしたのであれば無理があった。》
このプーチンの主張は9日の戦勝記念日でもウクライナ侵攻の理由とした。おそらくロシア国内で狂信的なプーチン大統領支持者以外は信じていないのではないかと思われる。ましてウクライナに派遣された将官兵士は誰と戦っているのかわからなかったのではないかと思われる。

プーチン大統領はおそらく精神的にのっぴきならないところまで来ている。隣国ベラルーシのルカシェンコ大統領も「この作戦がこんなにも長引くとは思っていなかった」と公言した。また北欧のスウェーデン、フィンランドも今のウクライナの状況を見てNATO(北大西洋条約機構)に加盟する決心をしたようだ。
またバルト3国はすでに北大西洋条約機構NATO・欧州連合および経済協力開発機構の加盟国、シェンゲン協定加盟国である。通貨は三国ともユーロ。
筆者はこれらの国々の状況を見ていて、よく知られているイソップ寓話の「北風と太陽」を思い出した。勿論ロシアのプーチンが北風。

結論を急ぐ。今ウクライナは無論欧米ではロシア兵のウクライナでの戦争犯罪の証拠集めが盛んだ。学校や病院への攻撃から、民間人への殺害やレイプ、拉致など枚挙にいとまがない。プーチンはこれらの事実を容認しているかに見える。さすれば責任者であるプーチンはこの罪から逃れられない。戦争犯罪の罪に以前にはなかった「平和に対する罪」と「人道に対する罪」についても、これを犯罪として処罰すべきことが規定された。いいかえれば、侵略戦争の計画、準備、開始および遂行、ならびに一般人に対してなされた殺害、大量殺人、奴隷化などの非人道的行為がいずれも犯罪とされたわけである。

もしプーチン大統領がこれらの罪に問われれば、欧米諸国には行けなくなるかもしれない。こういう意味でもプーチンはのっぴきならない状況を自ら作ってしまった。つまり、プーチンのロシアは今後生きる場所がなくなったということでもあり、大国ロシアの凋落は避けられないということである。帝政ロシア(農奴)時代、ソ連邦(社会主義)時代、そして民主化された東欧諸国に遅れて民主化できなかったプーチンという怪物を要したロシア。
やはり近い将来のロシアの凋落は避けられそうにない。