いや、安倍元首相のことだ。先頃北陸の福井新聞の招へいで彼が講演を行ったらしい。共同通信の記事で見つけた。曰く《「安倍晋三元首相が福井県で講演「最低限の打撃力は必要」ロシアのウクライナ侵攻、日本の防衛語る》 https://www.47news.jp/world/ukraine/7637193.html
その前には《「原発、重要な基幹電源」 安倍元首相 エネルギー安保で》
ウクライナの国民にとっても、東日本大震災による原発被害にあわれた方にとっても、あきれるほどの話だと思う。まず原発に関してだが、10年以上経ついまだに故郷に帰れない人々がいることに、彼は全くと言っていいほど留意していない。国家を経営してゆく上では、「多少の齟齬も弊害も我慢してもらわなければ」というスタンスに思える。「大所高所から自分は天下国家を語っているのだから一般国民は黙って聞け」と言わんばかりだ。《ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、エネルギー安全保障について「自前のエネルギーを確保していないといざというときに対応できない。原発はベースロード電源》とロシアのウクライナ侵攻を理由に原発の重要性を説いた。言っておくが福井県は国内で有数の原発立地県だ。しかし万一の時の避難には相当の混乱が生じる可能性があるという。
参考 東京新聞 「混乱するのが見えている」30キロ圏に28万人 広域避難不安拭えず 老朽・美浜原発3号機再稼働 https://www.tokyo-np.co.jp/article/112551
原発に関しては安倍氏の国会答弁を思い出す。
2006.12.13 参議院における吉井英勝議員と安倍首相の原発事故防止関連の質疑応答を記す。
（吉井議員）日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発１号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。
（安倍首相）我が国において運転中の五十五の原子炉施設のうち、非常用ディーゼル発電機を二台有するものは三十三であるが、我が国の原子炉施設においては、外部電源に接続される回線、非常用ディーゼル発電機及び蓄電池がそれぞれ複数設けられている。また、我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。
参考 https://kajipon.com/kt/column15.htm_
一方のロシアのウクライナ侵攻に関しては安倍氏はわが意を得たりのばかりに「集団的自衛権の行使が可能になれば戦争に巻き込まれると非難されたが、実態は逆。ウクライナがNATO（北大西洋条約機構）に入っていればロシアは攻めなかった」と強調。「バルト3国ははるかに軍事力が小さいが、NATOに加盟しているため攻められていない。だからこそ同盟関係は大切だ」と語った。> https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1528347
しかしながら今、恐ろしいほどの殺戮が行われているウクライナの状況に関して記事を読む限り一向に触れていない。むしろ殺伐たるロシアの侵攻を見て「だから言ったじゃない」とばかりに「NATOなど軍事同盟が重要」とのたまわっている。しかしちょっと待てと言いたいのは筆者ばかりではないと思う。
自民党関係者が語る。「安倍氏はロシアとの北方領土交渉を進めるためにプーチン大統領との距離を縮めようとしたが、結局、領土交渉に進展はなく、経済協力ばかり引き出されてきた。欧米の主要国の首脳が欠席した2014年のソチ五輪の開会式にも安倍氏は出席して、その直後にロシアは武力によるクリミア併合に踏み切るなど、むしろプーチン大統領からは“御しやすい相手”と見られてきたとさえ言える。今回のウクライナ侵攻に際しても、安倍氏は日本に米国の核兵器を配備して日米で共同運用する『核シェアリング』についての議論にばかり熱心に見える。自身のタカ派的なスタンスをアピールするために使っているフシさえあるのです」
参考 https://news.yahoo.co.jp/articles/7114cd260640e740835a4839882aaeaf110dea7f
まさに的を得ていると思うのが「自身のタカ派的なスタンスをアピールする」安倍氏。ウクライナからもロシアからも、いや国際政治の世界からも見放される日が近そうだ。
厚顔無恥なのか、健忘症なのか？ 知らんけど。