現代時評《台湾有事》山梨良平

新年の談話 を述べる台湾 蔡総統

このところ台湾をめぐる情勢が喧しい。台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は1日、新年の談話で最大の懸案である中国について「(中台の)両岸問題の解決には、軍事的な衝突は絶対に避けなければならない」と語った。さらに「中国が状況を見誤らず、軍国主義の拡大に突き進むことも防ぐように注意を促していく」と大人の対応で述べた。

しかるに大国・中国はますますヒステリックにわめきたてているように感じる。冬季オリンピックを控え、コロナ問題を抱え込み、西側主要国のオリンピック外交ボイコット等が影響しているかに見える。大国にあるまじき性急さだ。内部で何が起こっているのか、筆者などうかがい知ることはできないが、なにかが起こっていると思わせる。

日本防衛

昨年来、我が国では中国が台湾と事を構えるというニュースが政府・自民党を中心に流されている。だからなのかしきりに憲法を改正していざというときに備える体制をと煩い。また在日米軍が有事には「日本を守る」義務があるとしきりに喧伝し、在日米軍に対する経済的支援の増額をしている。果たして有事にアメリカは日本を守ってくれるのか?

現在、日米安保条約によって約束されているアメリカの「防衛義務」と呼ばれているのは「日本に対して日米共通の軍事的脅威に対処する行動を提供する義務」になる。これはアメリカでは「security commitment」と呼ばれ、日米安保条約が定める一定の条件下で、アメリカが果たすべき義務と理解されている。
たしかに「security commitment」は「防衛義務」とも和訳できる。だが、日本側とアメリカ側で認識されている意味合いは、軍事的視点からすると大きく異なっている。したがって本稿では日本における認識を「防衛義務」、アメリカにおける認識を「security commitment」と区別して呼称する。

日米安保条約で「アメリカには日本防衛の義務がある」という誤解

日米安保条約第5条には「各締約国は、日本国の施政下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和および安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定および手続きに従って、共通の危険に対処することを宣言する」との規定がされている。

一方、この部分に対応するNATO条約第5条には、「条約締結国(1カ国に対してでも複数国に対してでも)に対する武力攻撃は、全締結国に対する攻撃と見なし、そのような武力攻撃が発生した場合、全締結国は国連憲章第51条に規定されている個別的自衛権または集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し平和を維持するために必要と認められる軍事力の使用を含んだ行動を直ちに取って被攻撃国を援助する」 と記載されている。
その代わりに「アメリカの憲法上の規定および手続きに従って対処する」との趣旨が明記されている。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56908

筆者が思うのに日米安保で在日米軍が有事に即対応できるかといえば必ずしもそうではないと思う。先島群島は台湾に近い。与那国島は台湾との距離は111キロメートルしかない。一方沖縄本島との距離は511キロメートル。ほとんど台湾なのである。また不幸なことに日本列島に存在する原子力発電所は日本海側に位置する。つまり中国などに近い。テロに対する防備だが東京電力・柏崎原発はほとんどテロ対策はなされていなかったと指摘を受けたのは最近のことである。(https://x.gd/i1wtj

筆者は以前舞鶴港(23:50発)から小樽港(翌日20:45着 )へフェリーで移動したことがあった。 このスケジュールだと夜中に日本海沿岸を北上するわけだ。民間の商船なのでおそらく武器などは装備していない。テロに対して無防備なのだ。乗客定員746名。乗員を入れると800名になんなんとする。これがテロの対象となると大変だと思ったことがあった。夜陰に紛れて・・・。

台湾有事はたちまち與邦国島人口1700人。日本海沿岸の原発、フェリー等。戦争に巻き込まれるとたちまちここに挙げたところが犠牲になる。
我が国は防衛しにくい地理的条件がそろっているのだ。
「敵地(先制)攻撃」はたちまち日本を阿鼻叫喚の地獄と化す。
「憲法改正」など夢物語は口が裂けても言わないことだ。

ねえ、「外交の安部さん」!!?

それより現下の問題を解決することが重要。米軍関係者に対する検疫、税関、入国管理など通常の出入国管理は行われていないらしい。コロナ禍の現在、彼ら米軍関係者の状況は、米軍発表のデータ以外はまったく我が国の政府は把握していないという状況のようだ。

奇しくもアメリカではオミクロン株を含むコロナウイルスのまん延でCNN(2022.01.02 Sun)は次のように伝える。
「新型コロナの感染急増、日常生活に変化及ぼす水準と警鐘 米」
同記事によると 《新年を迎えた米国では、かつてない速度で新型コロナウイルス感染症が急拡大する中、多くの米国人にとって2022年の最初の月は、日常生活で変化を被る事態となる可能性があると、専門家らが警鐘を鳴らしている。》

米軍関係者が何人日米間を毎日移動しているのかもわからない。
いわばノーチェックの米軍関係者を野放し状態だと如何に空港などでの「水際作戦」も「ざる状態」といえよう。今はこちらのほうが「コロナ有事」なのだ。