現代時評《アフガン》片山通夫

 アフガンが大変なことになっている。米軍のアフガンからの撤退でタリバンが制圧した。タリバンも穏健派がいるようで、なんとなく平和裏に権限移譲されて、以前のように女性に対する圧政的で差別的な事態から抜け出て西欧の規範をアフガンにもたらすような印象を与えた。「アフガン報道官」は中東カタールのテレビ局アル・ジャジーラに「戦争は終結した」と述べ、15日の英BBCの電話インタビューに対しては、「数日のうちに平和的な権力の移行を望む」と述べ、崩壊したアフガン政権や外国軍部隊の協力者に対して「報復はない」とも明言した。

ところが8月26日に首都カブールの空港付近で起きた自爆テロの犠牲者が少なくとも170人、負傷者が200人に上った模様だ。イスラム国ホラサン州(IS-K)が犯行を認めたので、アメリカは即座にドローンで空爆し計画者とされる二人を殺害したという。

ここで少し固有名詞など言葉の説明を箇条書きでしておきたい。

*タリバン:アフガニスタンの宗教・政治・軍事勢力。Taleban(Taliban)はアラビア語「ターリブ」のペルシア語風複数形で、「アッラー(神)の道を求める者たち」(神学生、求道者)を意味する。
⇒https://kotobank.jp/word/%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%B3-176368

*IS-K:アフガニスタンとパキスタンで活動する過激派勢力「イスラム国(IS)」系の組織。正式名称は「イスラム国ホラサン州(ISKP)」という。
⇒https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58352178


ジハード:ジハードは本来〈努力〉〈奮闘〉の意味で,日本では〈聖戦〉と訳されることが多いが,厳密には正しくない。ジハードは,イスラームの聖典《コーラン(クルアーン)》が神の道において奮闘せよと命じていることが根拠とされる。ジハードは,《コーラン》に出てくる〈神の道のために奮闘することに務めよ〉という句のなかの〈奮闘する〉〈努力する〉にあたる動詞の語根jahada(ジャハダ)を語源としており,アラビア語では〈ある目標をめざした奮闘,努力〉という意味。
⇒https://kotobank.jp/word/%E3%82%B8%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89-74738

「ISホラサン州」はイスラム主義勢力内でタリバン最大のライバル勢力であり敵対勢力だ。イラクとシリアでカリフ国家を僭称した最大イスラム主義武装勢力「イスラム国」(IS)が猛威を振るった2015年、アフガンの支部として結成された。ISホラサン州は主にタリバンから離脱した過激な隊員で充員され、アフガンでも最も極端で暴力的なテロ武装集団として言及される。

ところでアフガンの地理的な位置だが、タジキスタンとパキスタンの間にかろうじて半島のように東に突き出た部分が中国と国境を接している。国境の中国側は、新疆ウイグル自治区・タシュクルガン・タジク自治県のカラチグ谷である。

道理で中国が神経質になるはずだ。何しろ新疆ウイグル自治区と言えば中国がはウイグル人住民がQRコードで管理され、自動車の全車両やメッカへのハッジの際には追跡装置が装着され、モスクなどに張り巡らしたAI監視カメラによって人種プロファイリングで識別され、様々なハイテクで顔認証・虹彩・指紋・DNA・声紋・歩容解析など一挙手一投足を監視する「世界でも類のない警察国家」「完全監視社会の実験場」が構築されたと欧米メディアや人権団体は批判している。一説には 100万人から300万人を新疆ウイグル再教育収容所に収容し再教育という名の拘束をしている。つまりことほど「イスラム分離・独立運動」を抑え込もうとして世界から非難されている。

今後、アフガン国内のタリバンとISホラサン州の対立、アメリカ及び中国の出方に注意を払う必要がある。