◇現代時評《緊張高まる日露間》片山通夫

宗谷海峡図

なぜか日露間の波が高くなってきた。ちょっと紹介する。

*ロシア、米国が日本にミサイル配備すれば報復と警告3月12日、ロシア外務省は、米国が日本に地上配備型ミサイルを配備したら報復すると警告した。インタファクス通信が報じた。(モスクワ発ロイター)
*ロシア、「宗谷海峡や津軽海峡の閉鎖」に関する日本の外交評論家の主張に反応 ロシア議会下院(国家会議)国際委員会のドミトリー・ノヴィコフ第1副委員長は11日、ニューズウィーク日本版に9日に掲載された日本の外交評論家で元外交官の河東哲夫氏の「北方領土問題で『変節』したプーチンとの正しい交渉術」と題したコラムで、河東氏が日本はロシア政府に領土問題を解決する重要性を意識させるために「例えば宗谷海峡、津軽海峡(ロシア本土と北方四島間の主要な補給・物流ルート)をいつでも閉鎖できることを示す」べきだと主張したことについてコメントした。
ノヴィコフ氏は、河東氏の主張に基づくと、日本で所謂「北方領土」問題と呼ばれているテーマを再び悪化させたいという願望が日本の政治エリートに再び生まれたような印象を受けると述べた。

日本との互恵的協力はクリルを巡る領土論争を取り払うだろう
サハリン州知事ノヴィコフ氏はロシアメディアRTに「この状況に新しいものは何もない… ロシアの立場は形成されており、憲法が改正され、それはロシアの国家、その領土の一体性の保証を求めている」と述べた。サハリン州クリル管区(イトゥルップ島)のワジム・ ロコトフ市長も、海峡を閉鎖できることを示すべきだとする河東氏の主張を批判した。ロコトフ氏は「退官した外交官の日本人。その意見はナンセンスだ。どんな方法で閉鎖するのだろうか?ロシアに宣戦布告でもするのだろか?誰がそんなことを思い描くというのか…  とはいえ、イトゥルップ島(択捉島)のミサイル兵器システムは、ほんの数秒であらゆる封鎖を『打ちのめす』だろう」と述べた。日本のマスコミではこれまでにも物議を醸す記事が報じられ、ロシア当局が反応を示している。先にロシアのペスコフ大統領報道官は、ロシアで政権が交代した場合に同国が日本にクリル諸島を譲渡する可能性があると報じるマスコミの記事を読まないようアドバイスした。

河東氏の主張
河東氏は本気でこのようなことを言っているのだろうか。筆者が考えるに二つの理由があるように思える。
一つは安倍前政権が完全に失敗した対露、すなわち対プーチン戦略が完全に瓦解し、すべての手が届かなくなった北方領土故の保守派へのリップサービス。今一つは観測アドバルーン。
実際に元外交官ともあろう人物がロシアを刺激するような説を唱えるとは思えないので、外務省からのもしくは菅政権あたりへの、今はやりの忖度で「言ってみた」のではないかと考える。
ロシアが、ロシアのどのあたりから、どのような反応が出るかのアドバルーンだと信じたい。
保守派へのリップサービスも兼ねて…。

日本には国際海峡が5つあるが、これらはすべて1977年(昭和52年)に定められた日本における領海法で特定海域として海峡の一部を公海にしたものであり、通過通航制度は導入されていない。その5つのうちの2つが津軽海峡と宗谷海峡である。通航制限が設けられていない公海を「いつでも閉鎖」する暴挙はロシアの反発は必至だ。
そう考えると観測気球も馬鹿な話だ。