現代時評《沖縄基地闘争とテロ等準備罪》:井上脩身

沖縄県の高江ヘリパッド建設に抗議中に逮捕された山城博治沖縄平和運動センター議長(64)の勾留が、今月16日で5カ月にも及ぶことになった。有刺鉄線を切断した器物損壊容疑でこのような長期勾留は極めて異常だ。山崎議長が中心になって進める米軍基地反対運動に対する弾圧の一環であることは明らかであろう。政府は「テロ等準備罪」の新設を目指しているが、山城議長不当勾留をみれば、同罪の目的がはっきりする。政府に反対する運動は、それが市民団体であっても「テロを実行する組織的犯罪集団」として摘発し、根絶やしにしようというものだ。すでに同罪は事実上、前倒し的に実施されているのである。
問題のヘリパッドは同県北部のアメリカ海兵隊基地、北部訓練場(同県村、国頭村)の半分余りの返還の条件として、6カ所で建設が計画されたものだ。2015年までに沖縄防衛局が2カ所の建設を終えて米軍に提供、オスプレイの訓練が急増した。このため地元住民が抗議行動を重ねたが、同防衛局は16年7月、残りのヘリパッドの建設を強行。反対運動が激化するなか、山城議長が現行犯で逮捕された。

容疑は同訓練場に侵入し、有刺鉄線を許可なく切断したというもの。事件としては不起訴でもおかしくない内容だ。しかし、同県警は10月20日、沖縄防衛局職員にけがを負わせた疑いで再逮捕し、11月29日には米軍キャンプ・シュアブのゲート前でコンクリートブロックを積み上げたとして威力業務妨害容疑で再再逮捕した。

山城議長は元沖縄県庁職員。自治労沖縄県職労副委員長などを務め、県庁退職後の2010年の参院選に社民党・沖縄県社会大衆党の推薦で立候補したが落選。13年の参院選では、比例区で社民党名簿登載第2位で立候補したが落選した。15年2月、キャンプ・シュアブ前で抗議中、米軍の敷地ラインを越えたとして米軍に一時拘束され、同年12月にも同キャンプに侵入したとして逮捕されたことがある。だが、どの行為も抗議、反対運動の際も警察官らとの衝突で発生したもので、通常よく起きる範囲内の出来事でしかない。にもかかわらず異常な勾留に及んだのは重大問題である。

ヘリパッド反対の声が強まっていた16年9月の同県議会で、池田克史県警本部長は「一般的に過激派といわれる極左暴力集団の参加も確認している」と発言。同県公安委員会の文書にも反対派住民を「犯罪勢力」と表現しており、公安当局はヘリパッド建設反対運動者を「犯罪者」扱いしていた。

山崎議長は、その経歴からみて「国会議員として、沖縄の民意を政治の場で実現させたい」との意志をもっていたことは明白だ。同県警と検察当局は山崎議長が過激派ではないことを分かったうえで敢えて長期勾留に踏み切ったと思われる。人権を著しく侵害する違法な長期勾留の疑いが濃厚だが、最高裁は今年2月20日、「勾留継続は憲法に違反しない」と、釈放抗告を認めない決定をした。司法を挙げのヘリパッド建設反対運動への弾圧というほかないであろう。

最高裁が「長期勾留合憲」の決定を下したころ、政府は「テロ等準備罪」の対象集団については「組織的犯罪集団」とし、対象犯罪のなかに日米地位協定にともなう刑事特別法の軍用物の損壊も含めることなど、詰めの検討に入っていた。ヘリパッド反対運動団体を公安当局が「犯罪勢力」としていたことはすでに延べた。山崎議長の有刺鉄線切断行為が軍用物の損壊に当たるとされれば、テロ等準備罪に該当するとみなされるおそれは十分にある。

山崎議長は今月13日、那覇拘置支所で妻と接見した。逮捕以来、弁護士以外の人と接見したのは初めてだという。米ワシントン州弁護士のローレンス・レペタ明治大学法学部特任教授はこの長期勾留について、「国際人権法に違反している」と指弾し、「恣意的な逮捕は世界中で独裁者が反対派を黙らせる常套手段として使われている」と指摘している。(3月7日付毎日新聞)

山崎議長への長期勾留は文字通りテロ等準備罪の準備といえるだろう。それは安倍晋三首相の独裁性を如実に示す法案であることを意味する。独裁国家は戦争国家になることを歴史は教えている。テロ等準備罪の成立を阻止しなければ、暗黒の国の道へと進むことになろう。