[:ja]現代時評《日米首脳会談を読み解く》:井上脩身[:]

[:ja]安倍晋三首相は10日、アメリカのトランプ大統領と首脳会談を行った後の共同記者会見で「日米同盟は強固な揺るぎない絆」と述べ、「緊密な関係」であることを強調した。問題は緊密の中身だ。同首脳会談の2週間前、米英首脳会談が行われ、「米英の特別な関係」を確認し合っている。米英の特別な関係とは、核兵器の共有にほかならない。その米英関係が日米同盟のモデルというのが従来のアメリカの態度である。トランプ大統領の最初の首脳会談の相手がイギリスのメイ首相、2人目が安倍首相であることを考え合わせると、トランプ政権は日米間の米英的特別関係化に一歩踏み出したと捉えるべきだろう。トランプ政権は近い将来、米国製核兵器の保有をわが国に求めてくる、と私はみる。
 安倍政権になって以降、日米関係はアーミテージレポートにしたがって展開されてきた。同レポートはブッシュ政権下の国務副長官だったアーミテージ氏が2000年に発表した「米国と日本――成熟したパートナーシップに向けて」と題する論文(第1次)を根幹とし、07年の第2次、12年の第3次報告を指す。第1次レポートで、「米国と英国の特別な関係が日米同盟のモデル」としたうえで、「米国の防衛技術の日本への優先的な移転」を提案。さらに第3次レポートで「次世代戦闘機、軍艦などの共同開発に向けた長期的な運用」を同盟の役割に挙げた。

同レポートに核兵器の言葉はない。しかし「米英の特別な関係」とは戦略核の共同開発と共有であることは軍事上の常識である。その具体例の一つは潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」。アメリカで開発され、1797年に配備された。その後、イギリスにも供給され、アメリカ海軍では14隻のオハイオ級原子力潜水艦にアメリカ製核弾頭付きで、またイギリス海軍では4隻のヴァンガード級原子力潜水艦にイギリス製核弾頭付きで搭載された。

イギリスのメイ首相は就任して間もない昨年7月、下院議会で「核抑止で重要なのは、敵に我々が核を使用する用意があることを知らしめることだ」と述べ、トライデントミサイル搭載原潜の更新を提案、可決された。英政府は今後20年間、310億ポンド(410億ドル)~410億ポンド(540億ドル)をかけて順次更新する計画だ。

トランプ大統領が就任後最初に首脳会談を行った相手として選んだのはメイ首相である。1月27日、会談はホワイトハウスで行われ、トランプ氏が「英国との深いついながりを新たにする日だ」と述べると、メイ氏は「(就任直後の)招待は特別な両国関係の証し」と応えた。メイ氏は、トランプ氏がNATO加盟国にGDPの2%以上を軍事予算に計上するよう求めていることに理解を示し、負担の公平化を図るために他の同盟国に働きかけることを約束した。

2人目の首脳会談の相手としてトランプ氏が安倍首相を選んだことは、「特別な関係」の文脈で考えるべきであることは本稿の冒頭にも指摘した。選挙中、日本を名指しして「在日米軍駐留費をもっと払え」などと強硬な発言を繰り返したトランプ氏は、会談では一切この点に触れず、逆に「米軍を受け入れてもらい感謝する」と低姿勢ぶりをみせた。また、会談前、「不公平」と日本の非難していた対米自動車輸出問題についても、言及しなかった。

この態度の豹変をマスコミはきちんとした分析をせず、「満額回答」などと安倍首相をもちあげた。おかしい、裏に何かあると思わないならば、ジャーナリズムとはいえない。外交・防衛政策にほとんど無知なトランプ氏に対し、従来通りの対日政策を行うよう求める強い力が背後で働いていた、と考える以外に説明がつかないではないか。間違いなくいえることはアーミテージレポートの復権である。選挙中、アーミテージ氏が「トランプではダメだ」と反トランプ色を鮮明にしていただけに、私も正直意外である。

共同声明の中で注目されるのは「核および通常兵力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」との文言だ。日米の緊密化を示したこの文章の真の意味は米英の特別関係化と読みとるべきである。

トランプ大統領が安倍首相との首脳会談で米軍の駐留経費の増額を求めなかったことに、日本政府は胸をなでおろしたという。だが、トランプ氏は本質的に商売人である。「核兵器を買え」と言ってくるだろう。ただでゴルフを楽しませてくれるような甘い男ではない。[:]