[:ja]現代時評《生前退位の問題》:片山通夫[:]

[:ja]この正月に「明治維新という過ち」という本(株式会社毎日ワンズ刊)を読んだ。原田伊織という方の本だ。副題に「日本を亡ぼした吉田松陰と長州テロリスト」とある。かなり過激なタイトルに引かれた。

どのような内容か簡単に書くと次のようになる。

《明治直前に「活躍した」吉田松陰は現代の英雄ともてはやされ、松下村塾を開き「明治の元勲たち」の教育をしたと言われている。しかし実際は1842年に松下村塾を開いたのは玉木文之進で、松蔭は1857年にその塾頭となったが、翌年投獄されたので塾は廃止された。

また冷静に考えてみると「松陰に扇動された長州のテロリストたち」が徳川幕府を倒した内戦だった。もっと言えば、日本の歴史をすべて天皇中心に書き換える『大日本史』を基にした水戸学というカルト的な思想が倒幕運動に利用された。水戸学は陽明学と国学を混ぜた「日本が世界の中心で天皇がその王である」という誇大妄想的な思想であった。

いずれにしても明治維新は「テロリストの狂信的な行動で成し遂げられた」のであり「勝てば官軍」とはよく言ったものだ。

さてその明治以来の思想が現在に脈々と息づいているのが現在の政治だが、天皇の側から大きな問題を投げかけられた。「生前退位」である。政府は「有識者」というあたかも「公平に物事を考えることができるかのような組織」を使って明治以来の「伝統」を重んじるがごとき結論を出した。「皇室典範の改正でなく、特例法による退位」というものである。

1月11日の新聞などでは「天皇陛下の退位をめぐり、政府は2019年1月1日に皇太子さまが新天皇に即位し、同日から新たな元号とする方向で検討に入った」と伝えた。

しかしこれは欺瞞ではないのか。たった150年程度の歴史を「伝統」と言い募り、正否はともかく、2000年の伝統を踏みにじる行為であり、皇室の伝統を無視した「党略」の結果だとしか思えない。つまりここにも水戸学の精神が生きていて、「明治のテロリストたち」の子孫が天皇家を我が物にしているとしか思えない。

なぜ今の天皇だけに限るのかに政府は国民に丁寧な説明が必要だ。

 

 

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