[:ja]現代時評+ 《プーチンがやってくる!》:片山通夫[:]

[:ja]明日15日、ロシアのプーチン大統領が訪日する。我が国の首相の最大の関心事は「北方領土の返還」だという。いや、言っていた。この夏の終わり頃までは。情けないことに我が国の大新聞もテレビも「2島返還だ」とかなんとか、あのムネオハウスの鈴木宗男氏まで首相もマスコミも引っ張り出して大騒ぎだ。そしてついに明日大統領はやってくる。しかしここにきて 安倍首相とその周辺は国民とマスコミの間で過熱した「領土返還への期待」の火消しに躍起だ。

アナトリー・クージン氏インタビュー

%e3%82%af%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%83%b3%e6%b0%8f ここで筆者が過去にサハリンで、郷土史家としても名高いアナトリー・クージン氏(写真左)にインタビューした内容をまず紹介したい。この記事は2013年夏号のLapiz に掲載した。

インタビュー「ロシアは南クリル(北方領土)を離さない」

  このインタビューは2013年3月26日時点でのインタビューで、その後、安倍首相が訪露して、情勢が大きく変わる可能性がある。クージン氏は「個人的な見解だが」と断った上で、インタビューに応じてくれた。

*プーチン大統領は昨年3月、大統領に就任後、北方領土問題に関して「双方に受入れ可能な解決策」をと言及した。この「解決策」に関して日本では「面積等分」と理解されているようだが。具体的にはダマンスキー島(中国との国境)はそのようにして境界線が策定された。
クージン:中国との国境問題は「戦争の結果」持ち上がった問題ではない。全く違う次元の問題だ。南クリル(北方領土)は我々が《戦争で勝ち取った》領土である。それ以前、1905年の日露戦争で日本は勝利した。結果、それまで我々の領土であった《南サハリン》は日本の領土となった。これらの理由で、ダマンスキーのケースと一緒に論ずることはできない。また日本は、1952年4月28日発効したサンフランシスコ条約「千島列島・南樺太の権利、権原及び請求権の放棄(第2条(c))で戦前の持てる権利権原は放棄したはずである。

*当時のソ連はサンフランシスコ条約に参加(署名)していないが。

クージン:我国が署名しようとしまいと、サンフランシスコ条約に日本は署名した。受け入れたのだ。最も受け入れざるを得なかったとは思うが。そうでないと、《今の日本》は存在し得なかったのではないか。1956年9月9日、当時のフルシチョフは「歯舞、色丹の二島を《日本に贈呈する》と言った経緯があった。まずここで注目してもらいたいのは、《贈呈》という言葉だ。決して《返還》とは言っていない。我々のものだから《贈呈》なのだ。しかしこれは実現しなかった。当時の最高ソビエト(註)が承認しなかったからである。一方、日本はソ日間に《平和条約》を結ぶという考えがあったが、アメリカがこれに反対したようだ。それが《四島一括返還でないと平和条約は結べない》という論理に日本は陥ってしまった。
註)ソビエト連邦の最高国家権力機関

*日本では5月の安倍首相の訪露で何らかの結果が出るのではないかと期待しているが。

クージン:例えプーチン大統領が日本の要求に一定の譲歩をしたとしても、我国の連邦議会はそれを承認することは無いと思う。ちょうど56年のフルシチョフ時代のように。

また領土問題は第二次大戦で解決済だ。もしこれをひっくり返すなら、世界中で領土問題に関して火がつく危険がある。そんなことは誰も望まない。

*それではロシアとの平和条約は結べないというのが日本の立場だが。

クージン:《平和条約》には何の価値も無いのではないか。条約が無くとも交流は可能だ。そんなものにこだわる必要は無い。また、南クリルの周辺には、ロシア天然資源省の専門家によれば、数カ所に油田・ガス田が存在する可能性があり、埋蔵量は石油換算で三億六千万トンとの試算もある。これは、日本の消費量のほぼ一年分に匹敵する。千島列島最大の択捉にはチタンなどの希少金属が豊富にある。また水産資源も豊富だ。サンマはロシアでは唯一の漁場だといえる。そんな有望な地域をロシアは手放せない。

インタビューを終えて
インタビューは一時間半以上に渡って行った。はじめから終わりまでエネルギッシュな話し方で、また豊富な知識に驚かされることもしばしばだった。筆者の知識は勿論日本の外務省や政府、それに新聞などマスコミから得た知識でしかないが、クージン氏は、歴史学者として、またソ連当時、サハリンの党書記を歴任し、公文書館にも勤務したという経歴があり、そしてサハリン州は北方領土を含む千島列島をその行政範囲にある。
 同氏は、サハリン住民でもありその豊富な実績と知識で《確たる意見》をお持ちのように見えた。

アナトリー・クージン(1939年生まれ)
サハリン州アレクサンドロフスク・サハリンスキー地区出身
1962年党職員に。1969年ハバロフスク党学校で大学教育を受け優等で卒業。その後20年間党の仕事に就く。うち10年間はサハリン州党委員会書記。1988年から公文書施設に勤務の経験。現在は歴史学博士 連邦極東大学教授。
著書に沿海州・サハリン 近い昔の話(翻弄された朝鮮人の歴史)凱風社刊1998年など

このようにクージン氏は「平和条約はなくとも、経済、文化などの交流は可能だ」と話し。「北方領土は戦争で得た我が国(ロシア)のものであり。サンフランシスコ条約で、確定している」と力説した。
このクージン氏の見解は、プーチン大統領にインタビューをした読売新聞などの記事を読んだ朝日新聞の今朝(2016/12/14)の記事からも読み取ることはできる。

「淡い期待を打ち砕くかのように、ロシアのプーチン大統領が15、16日の訪日を前に、北方領土問題で強硬な姿勢を示した。平和条約締結についての共同声明も採択は困難な見通しだ。日本側は、北方領土での共同経済活動など、今後の環境整備に向けて、ぎりぎりまで調整を続ける考えだ」と、今朝の朝日新聞は伝える。
 また同記事はアメリカをはじめとする西側の「対露制裁」がロシアにとって、もっと言えばプーチン大統領にとって屈辱以外の何物でもなかったともとれる記事が掲載されている。

12月7日に行われた読売新聞などとのインタビューでは、一転して強い不快感を表明した。プーチン氏が問題視するのは、日本の米国との同盟関係そのものだ。「日本が(米国との)同盟で負う義務の枠組みの中で、どの程度ロシアとの合意を実現できるのかを見極めなくてはならない」「日本は独自に物事を決められるのだろうか」と、疑問を呈した」とある。
 アメリカの尻馬に乗って、外交と言えば、世界中に国民の血税をばらまく以外に脳がないアメリカの言いなりの安倍政権を痛烈に皮肉ったといえる。

 ここで筆者が近い過去に書いたコラムを紹介してこのコラムを終えることとする。

ぜひお読みいただきたい。

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