[:ja]現代時評《現代時評 もんじゅ失敗に懲りない政府》:井上脩身[:]

[:ja]政府は高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉する方針を決めた。12月末に最終決定するという。この一方で、核燃料サイクル政策は引き続き推進し、高速炉の実証炉や実用炉を目指す、としている。原型炉であるもんじゅが失敗であることが明らかになり、政府ですら「廃炉やむなし」を認めざるを得なくなったというのに、原型炉より高位の実証炉、実用炉を造ろうというのだ。もんじゅはたびたび事故を起こし、「危険な夢の炉」といわれてきた。より高位の高速増殖炉はより危険な炉にほかならない。福島第1原発の事故によってもなお危険認識を欠く安部政権に、どうすればその恐ろしさをわからせえることができるのだろうか。
 高速増殖炉は高速の中性子を使用することで核燃料のプルトニウムが増殖する原子炉。冷却材として金属ナトリウムを使うが、ナトリウムは酸素と激しく化合する性質があり、高温のナトリウムが空気に触れると、激しく燃焼する。また水と接触すると水素が発生し、その水素が空気中の酸素と反応して爆発する危険性がある。このため、研究者らは高速増殖炉の運転は極めて難しい、と指摘している。

しかし、国はこうした警告には耳をかさず、1983年、敦賀市にもんじゅの設置することを許可し、91年に運転を開始。95年8月に送電を始めたが、同12月、2次冷却系の配管からナトリウムが漏出、床ライナ(漏えいしたナトリウムがコンクリートに接触することを防止するための炭素鋼製の板)を損傷させた。コンクリートに触れると、ナトリウム・コンクリート反応によって大量の水素が発生して爆発する恐れがあり、もんじゅの運転は停止された。

2010年5月、14年5カ月ぶりに運転が再開されたが、同8月、運転停止中に燃料交換装置が原子炉内に落下する事故が起き、運転は凍結された。12年11月には約1万点に及ぶ機器点検漏れが発覚している。

こうした事故や管理上の欠陥などが重なって、運転したのはわずか250日だけだ。それにもかかわらす、国は1兆円以上の国費を投入。仮に再稼働すると、政府の試算では耐震補強工事などで約5800億円の追加費用が必要という。政府は「これ以上の巨額の投入は困難」と判断し、廃炉に踏み切る方針を固めた。

問題なのは、もんじゅの失敗を反省することなく、核燃料サイクル政策を進める政府の姿勢だ。核燃料サイクルを維持させるために、政府は通常の原発でプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を使って発電するプルサーマル計画を立てている。だが現在、この発電をしているのは伊方原発3号機の1基だけ。建設中の大間原発でフルMOX発電が計画されているが、函館市長が「フルMOXは危険極まりない」と設置許可の取り消しを求めて行政訴訟を起こしており、プルサーマル計画は暗礁にのりかかっているのが実態だ。

そこで政府が目につけたのはフランスが30年ごろに運転を計画している新型高速炉「ASTRID(アスリッド)」。共同研究に名乗りを上げる考えだ。これを踏み台に、新たな高速増殖炉の建設する、というのが、政府が描くストーリーである。

核燃料サイクルが原発政策の根幹であり続けるのは、電力業界にとって、プルトニウムの増殖以上にカネが増殖するからであろう。本来、原型炉が頓挫したのだから、少なくとも実験段階に戻って、安全性(安全であるはずはないが)の研究をし直すのが筋だ。ところが、逆に実証炉や実用炉の建設に向かうというのは、論理的に逆立ちしている。この論理的矛盾そのものが、陰に利権がうごめいていることを示しているといえるだろう。

プルトニウムは冥王星(プルト)から命名された。しかし「人類が遭遇した物質のなかで最高に毒性がある」といわれ、アメリカは1977年に核拡散の懸念から原型炉の開発を無期限に延期したうえ、中止を決めた。ドイツは91年に原型炉の建設を中止。イギリスも94年に原型炉を閉鎖した。冥王星が惑星から外されたように、高速増殖炉も発電から外されるべき存在なのだ。

もんじゅという原型炉の廃炉に追い込まれながら新たな高速炉を目指す日本。その旗振りをする安部晋三首相については、「怖いもの知らず」という以外に言葉はみつからない。

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