[:ja]現代時評《反憲法的な辺野古判決》: 井上脩身[:]

[:ja]辺野古基地建設をめぐり、埋め立て承認を取り消した沖縄県知事の処分に対し、国の是正指示に従わないのは違法として、国が翁長雄志知事を相手取った違法確認訴訟で、福岡高裁那覇支部は9月16日、国の請求を認める判決を言い渡した。多見谷寿裁判長は「国防・外交上の必要性について知事は国の判断を尊重すべき」として、国の地方への優位性を強調した。平たく言えば辺野古基地建設は国の国防政策だから、知事は文句を言わずに国に従えというのである。「住民の福祉の増進」という地方自治の基本精神を理解しない住民切り捨て判決である。
 この裁判のポイントは、普天間基地の移転先として、辺野古沖に基地を建設する、との国の方針を受けて仲井真弘多前知事が2013年12月27日、辺野古沿岸部の埋め立てを承認したことだ。14年11月の知事選で仲井真氏を破って当選した翁長知事は15年10月13日、埋め立て承認を取り消したところ、国は11月17日、承認取り消しの撤回を求めて代執行訴訟を提起。16年3月4日、国が代執行訴訟を取り下げて移設工事を中断するとの和解が国と県の間に成立したことから同7日、和解に基づき国が承認取り消しの撤回を求める是正を翁長知事に指示し、7月22日、提訴に踏み切った。裁判では、是認指示に従わない翁長知事の行為に違法性があるかが争われた。

判決で多見谷裁判長はまず「国防・外交は地方公共団体が所管する事項ではない」と分析。これは同法第1条の2第2項に「国際社会における国家としての存立にかかわる事項については国が担う」とあることを根拠にしたとみられる。同裁判長はこの上にたって、「地方公共団体には国全体の安全を判断する権限も、判断する組織体制もなく、責任を負う立場にもない」と指摘。「知事が埋め立て承認を拒否した場合、地方公共団体の判断が国の判断を優先することにもなりかねない」と述べ、国の優越性を強調。「是正指示に従わないのは不作為による違法に当たる」と判断した。

地方自治法は国と地方自治体の役割分担について、国全体に関わることは国が、住民に身近な行政は地方自治体が担う、と規定している。米軍基地の在り方については日米安保条約上、重大な国政問題であることは自明であろう。問題は基地にかかわる事項について地方自治体が独自の判断をすることが地方自治法上許されないか、だ。

この問題を考える前提として歴史的な経過を踏まえておこう。第2次大戦後、沖縄を統治したアメリカは「防共の砦」として軍事基地化に乗り出し、1953年、土地収用令を公布した。家ごとブルドーザーで敷きならすという強奪同然の暴力的収用で農民から農地を奪い取ったもので、「銃剣とブルドーザー」と今も怨念を込めて沖縄県民に語り継がれている。

国は96年に普天間返還を日米政府で合意した。その結果として、普天間移設先として辺野古が浮上。国は「辺野古の建設ができなければ普天間返還もできず、ひいては日米の同盟関係が揺らぐ」として、国策として辺野古基地を建設を進める構えだ。だが、「奪われた沖縄県民の土地を返還させる」ことは、同法にいう住民に身近な行政でなくて何であろう。同法は「地方自治体は住民の福祉の増進を図ることが基本」ともうたわれている。04年8月、米軍大型ヘリが沖縄国際大に墜落炎上した事故にみられるように、基地の存在そのものが沖縄県民の安全を阻害する要因でもある。米軍基地の撤去や新基地建設阻止は同法の精神に合致しており、翁長知事の行為は称賛こそされ、責められる理由は全くない。

憲法は「国は公衆衛生の向上、増進に努めなければならない」(第25条2項)と国の義務を規定している。この観点から、国は率先して基地を縮小しなければならない義務があるといえる。多見谷裁判長にいささかの憲法感覚があるならば、「辺野古ありき」の国に対し、新基地建設まい進姿勢に反省を求め、翁長知事に歩み寄りを迫る判示をしたはずだ。ところが多見谷裁判長は逆に「辺野古の被害を除去するには辺野古に新施設を建設するしかない」と言い切った。「反憲法判決」というほかない。

安部晋三首相は、この政権べったり判決を錦の御旗に、辺野古建設を強行するに違いない。安倍一強といわれる。安部首相は立法だけでなく司法までも思い通りにしようとの独裁姿勢がこの判決になったみるべきだろう。三権分立という民主国家の基本制度は危機に瀕している。[:]