現代時評《炎上文化》:片山通夫

炎上という言葉がある。不祥事などの発覚をきっかけに、非難が殺到する事態または状況を差す。また、このような状態を祭りとも呼ぶ。しかし昨今、そんな生易しいものではない。著名人などのちょっとした言動を、ネット上で匿名であげつらい、それに呼応してじゃんじゃんと誹謗中傷を繰り返す。
 朝日新聞に次のような記事が掲載された。

*元朝日記者長女を中傷、男性に170万円支払い命令

  元朝日新聞記者の植村隆氏の長女(19)の言葉
匿名の不特定多数からのいわれのない誹謗中傷は、まるで、計り知れない「闇」のようなものでした。

 

*たたかれる基準、今も分からない みのもんたさん
 熊本の地震を受けて、ツイッターに「自衛隊きちんとしてほしいね」と書いたんです。そしたら「きちんとしろとは何事だ」と、大変なご批判をいただいた。炎上だね。僕が言いたかったのは、持てる力を存分に生かしてがんばってほしい、ということ。話し言葉ならニュアンスも伝わるんだろうけど、文字だとそうはいかなかった。そこは僕の不徳の致すところ。謝りました。でもね、自分のことはさておいて、他人には何でも「ふざけるな」という連中がいるんだな。情けない。

*不謹慎狩りは「安っぽい正義」 武田砂鉄さん

本地震の直後、芸能人を標的とした「不謹慎狩り」がネットで横行しました。自宅が損壊したタレントの井上晴美さんがブログに「ただ普通に生活が出来るものがあればいいです」と苦境をつづると、「愚痴りたいのはお前だけじゃない」などと中傷を受けた。完全に言いがかりですが、本人は「これ以上のつらさは今はごめんなさい」と、しばらく更新をやめました。
 不倫報道でベッキーさんらが猛烈にたたかれました。謝罪したものの、「そんなんじゃ謝ったうちに入らない」との反応もあった。そもそも、なぜ私たちは彼女に謝ってもらわなければならないのでしょう。相次ぐ不倫報道後の謝罪会見を比較し、採点する番組や記事をいくつも見かけました。再度のバッシングを誘発するかのようなやり口に閉口しました。 

ここでコメントされている方々は一様に「その(たたく)基準が不明」と言い、「なぜ無関係の人に謝ってもらわねばならないのか」と疑問を呈している。まさにその通りなのだ。
ベッキーに直接迷惑をかけられたわけでもないし、浮気騒動など身近にいくらも転がっているだろう。熊本地震の時の被災者の嘆きも「お前だけじゃない」とののしる輩がいるのはいささか度を越している感がある。いっそ「あんたにゃ関係ないだろう」と開き直ってみたいだろうが、そうもゆかないのがご時世なのか。

一方で、冒頭に掲げたように「元朝日記者長女を中傷、男性に170万円支払い命令」という話も出てきている。「つまらん正義感」からか、19歳、いや当時はもっと若かっただろう少女にたいして、本名や写真をネット上に掲載したとある。全く無関係の少女に対してこのような卑劣な行為に対する判決は、今後の警鐘になるだろう。

なぜこのような情けない状況に世の中が陥ってしまったのか、その原因は様々だとは思うが、一つ言えることは、テレビや新聞などに露出している著名人、特に政治家の言動が、実にいい加減な状況だということが言える。

例えばTPPに関する安倍首相の言、国会の委員会での低俗なヤジにはじまって、選挙前公約をないがしろにできる政治家の責任は重い。

とまれ、自分の言動にはそれがたとえ匿名であっても、自ら責任を取る必要があるし、それが社会の通念だろうと思うのだがいかがなものだろうか。
またテレビ局なども、ネット上の《炎上文化》を番組のバロメーターの様に扱うことはやめることだ。ある調査によると、炎上させている匿名のユーザーは全体のほんの0、1%程度だとか。あたかも全体の意見だと間違った扱いをすべきでない。