現代時評 《「もんじゅ運営失格」勧告の意味》:井上修身

原子力規制委会は11月18日、高速増殖原型炉「もんじゅ」を運営している日本原子力研究開発機構(原子力機構)の適格性に懸念があるとして、機構を所管する馳浩文部科学相に、半年後をめどに新たな運営主体を示すよう勧告した。だが、これによってもんじゅが廃炉に向かうと楽観視してはならない。高速増殖炉は核兵器の材料に転用できるプルトニウムをつくりだす炉である。この勧告にもかかわらず、政府がもんじゅ延命策をとるならば、その狙いはプルトニウムを確保することによって、核兵器を持てる潜在的能力の維持であろう。集団的自衛権行使法の制定に踏み切った安倍政権である。将来、日本独自の核の傘をさせるようになろう、と考えださないとは言い切れない。

高速増殖炉は、核燃料としてウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX燃料)を使用、ウラン238をプルトニウム239に転換させるもので、消費した燃料以上の核物質が増殖されることから、「夢の原子炉」といわれた。1967年、もんじゅの運営主体として動力炉・核燃料開発事業団(動燃)が発足し、91年にもんじゅの試運転が始まった。95年、ナトリウム漏れが起きて運転を停止。98年、動燃を改組して核燃料サイクル開発機構に。さらに2005年、核燃機構と日本原子力研究所が統合し、原子力機構が発足した。

運営主体がこのように変遷し、10年に運転が再開されたが、3カ月後、燃料交換装置が原子炉内に落下する事故が発生。12年には約1万件に及ぶ機器の点検漏れが発覚した。13年、規制委は運転禁止命令を決定したが、14年4月、政府はエネルギー基本計画の中で、もんじゅを存続させることとした。

高速増殖炉は冷却材に使うナトリウムが水と反応すると水蒸気爆発を起こしやすく、扱いが極めてやっかいであることは世界の常識だ。欧米やロシアなどの各国は高速増殖炉から撤退したが、日本政府だけがもんじゅに固執、既に1兆円以上の巨費を投入してきた。

こうしたなかでの規制委の勧告をどう読み解くべきだろう。

規制委の田中俊一委員長は「原発は絶対に安全ということはない」といいつつも、新規制基準に適合していれば再稼働を認める立場である。実際、川内原発1号機(鹿児島県、九州電力)について13年7月、審査をパスさせた。これによって今年8月、運転を再開して臨界に達しており、ある意味で、安倍政権の原発推進政策に規制委がお墨付きを与えた形だ。その規制委でさえ原子力機構にバツ印をつけた、ということは、もんじゅ自体がバツ印であることを意味する。規制委は、「高速増殖炉からの撤退」という世界の常識にようやく従うようになった、といえる。

仮にもんじゅが稼働できるようになるとしても、そこで産みだされるプルトニウム239の含有割合が小さいため核兵器用には使えない、として、政府関係者は核武装想定疑惑を否定する。しかし05年、ノーベル物理学賞を受賞した研究者らが日本政府にNPT(核不拡散条約)の強化を要請した文書で「テロリストも民生用のプルトニウムを使って強力な核兵器――少なくともTNT火薬換算で1000㌧の破壊力を持つもの――を作ることが出来る」と指摘した(石橋克彦編『原発を終わらせる』(岩波新書)。基本的には六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場についての記述だが、もんじゅにも当てはまるだろう。

同書で石橋氏は「秘密裏に原子炉級プルトニウムで核兵器を作ろうとする国が現れるのではないか」と危惧している。その国が日本でないと言い切れるだろうか。自民党の国会議員のなかに、「核武装すべきだ」と主張している者は決して少なくはないのである。