現代時評《ガラパゴス化した政権とマスコミ》:片山通夫

ウイキペディアで調べてみた。

ガラパゴス化(ガラパゴスか、Galapagosization)とは日本で生まれたビジネス用語のひとつで、孤立した環境(日本市場)で「最適化」が著しく進行すると、エリア外との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、外部(外国)から適応性(汎用性)と生存能力(低価格)の高い種(製品・技術)が導入されると最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である。ガラパゴス現象(Galapagos Syndrome)とも言う。

毎年秋9月の第3週目の火曜日になるとニューヨークでは国連総会が開かれる。今年も開催された。安倍首相は総会後の記者会見で、国内でのそれと同じように、シナリオ通りに会見を進めようと目論んだ。つまり、国内の記者クラブでやるようなシナリオを作り、NHKだの大手新聞社の「鮨仲間、てんぷら仲間のお友達記者」にシナリオを読ませ、それに得々と答えたわけだ。そして日本のお友達記者たちは「国連の安保理常任理事国入りに言及したこと」などを華々しく伝えた。

しかしそのような「出来レース」は国際舞台では通用しなかった。その会見に同席したロイター通信の記者が「あなたはシリアの難民問題で支援を表明したが、なぜ難民を受け入れないのか?」と質問すると、通訳を通して質問を理解した安倍首相の表情が強張った。実は、その質問に慌てたのは安倍首相だけではなかった。会見場にいた日本人記者全員が「予定外」の質問にざわめきたったのだ。(この項iAsia)

またiAsiaは「質問事項をあらかじめ提出しろということですから驚きました。そんなことは、アメリカでは記者倫理に違反する行為です。ところが、それは日本の政府と記者との間では常に行われていることだというではありませんか。本気かよ?と思ったのは私だけじゃありませんよ」と初めて日本の首相の会見に臨んだアメリカの雑誌記者の言葉を伝えている。

前述のロイターの記者の質問に安倍首相は「今回の難民に対する対応の問題であります」と切り出し、「人口問題として申し上げれば、我々はいわば移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります」と言ってのけた。

意味不明としか言いようがない回答だというのが大方の理解だ。「女性の活躍」も「高齢者の活躍」も「出生率を上げる」ことも人口問題としては重要なテーマだ。しかし、今そこにいるシリアの難民に関する質問の回答にはなっていない。

ここで安倍首相の馬鹿さ加減、能力不足をあげつらうことはしない。しかし、日本を代表する大手マスコミが「出来レース」的会見しかニューヨークで出来ないのなら、アメリカまで行く必要はない。そんな会見にぞろぞろ金魚の糞のごとく首相についてゆく費用がもったいない。あらかじめプリントしたインタビューメモを外務省なのか内閣府なのかは知らないが、もらっておけば事足りるわけだ。

こんなことを書いているとき、ニュースが流れてきた。「英紙『Times』がNHK内部文書を暴露。安倍政権がNHKに南京大虐殺や慰安婦問題への言及を禁止」とある。 Timesが暴露した文章によると、NHKは安倍政権から南京大虐殺や慰安婦問題などへの言及を禁止されていた。安倍政権側はNHKに強く日本の保守的な民族主義と政府の立場を反映するように命令し、NHKもそれに従っていたという話。

さて話は1976年というからだいぶ昔の話だ。 読売新聞大阪本社社会部部長に黒田清という方がいた。この社会部チームの記者は在京のメディアから「新しい新聞記者集団」として「黒田軍団」と名付けられ注目を集めた。読売新聞大阪社会部として、1984年には「警官汚職」で日本ノンフィクション賞、1985年に「戦争」で菊池寛賞をそれぞれ獲得したという。

ところが読売新聞の当時の論説委員長は渡邉恒雄氏(ナベツネ)だった。黒田軍団の反権力、反差別、革新・左派色の強いスタンスとは全くかみ合わなくなり、最後には黒田氏は退社し、フリーの1987年1月10日に大阪読売を退社。その後は「黒田ジャーナル」を主宰するフリージャーナリストとして、ミニコミ紙「窓友新聞」発行の他、テレビ、ラジオのコメンテーター業、日刊スポーツ・大阪本社版に連載「黒田清のぶっちゃけ・ジャーナル」を、しんぶん赤旗日曜版に連載「半共ジャーナル」等のコラムを執筆した。(この項ウイキペディア)

この黒田氏と安倍首相に金魚の糞のごとくに連なっている現在の大手マスコミ(単に政権に取り入っている記者クラブの連中)の連中の思考回路を比べてもらいたい。いずれがジャーナリストとしての矜持を保っているか。

記者クラブのぬるま湯にのんびりと浸かっている記者諸君!職を賭してまで「反権力、反差別、革新・左派色の強いスタンス」をあなた方は貫けるか? 無理だろうな。

そんな記者とも言えない記者や政治家しか持てない我が国の国民は不幸だ。