◆現代時評 《ロシアと日本の温度差》片山通夫

筆者はこの9月2日、ロシア・サハリン州の州都、ユジノサハリンスクにいた。2日と言うのはロシアにとっての対日戦勝記念日だ。おりしも今年は戦後70年。サハリン州にとっては《血であがなった南クリル》を再認識するのには絶好の機会でもあった。

こう書けば、日本政府やその関係者または北方領土関係者は不快な思いをするかもしれない。しかし現実を見据えなければならない時期が来ているのではないだろうか。ロシアの軍事評論家であるV・カーシン氏は9月22日のsputnikのウエブサイトで次のように述べた。「憤慨や驚きには値しないとし、その理由として南クリル諸島では法に違反したことも、非常事態や扇動も行われていない」

またラヴロフ外相は「係争領土は日本との対話の題材ではない」と断言した。

これらの発言は何を意味するのか。我が国ももう一度頭を冷やして考える必要がある。筆者が9月2日にユジノサハリンスクでの対日戦勝記念日の式典を取材した印象から言うと、これら軍事評論家や外相の発言は単なる「ロシア国民をなだめるため」のリップサービスではないということだ。ロシア人は「血であがなった領土」を手放す気は全くないと断言したい。ロシアは最近になって南クリル(北方領土)に対するインフラの整備など様々なアプローチを行っている。また軍備も拡大している。日本が「憲法の解釈を内閣一存で変えて」まで集団的自衛権の発動を可能にしたことへの対応であろう。余談になるが、過剰な防衛設備は対する外国も同様の装備の充実などハードは無論ソフト面でも拡充を図る。

ラヴロフ外相は岸田外相との会談での後、「領土問題はテーマではないし、その話題もなかった」と述べた。注意しなければならないことが一点ある。ロシアは(おそらく中国も北朝鮮も)日本の背後にはアメリカが控えているということに注目していることだ。これはロシアやその周辺の東アジアの国々は、直接的には相手が日本だろうと考えていても、決して日本単独とはみなしていないということである。そしてアメリカは「世界中のどこへでも自国・アメリカが不利益になると手を突っ込んでくる」ということをよく知っている。

集団的自衛権を可能にした安倍政権は、領土問題を抱えるロシアや中国とアメリカの手先になって戦うことを決意したということが言える。最後にラヴロフ外相のインタビューの一部をsputnikから転載したい。

Q: ロシアは南クリルの兵員を増強することで、世界に向かって、この島々は法的にも、第2次世界大戦の結果としても自国に属するものと捉えるというシグナルを送り、この領域をそう受け入れ、クリルの強奪など考えるなという呼びかけを行っているのだろうか?

「そうだ。だが日本側は、私の判断では強奪など考えてもいないと思う。このため南クリルにおけるロシア軍の兵員増強は極めて実現性の低いカタストロフィー的状況のシナリオが起きた場合に保険をかける手段といえる。しかもこの保険は日本人に向けたものというよりは米国に向けたものだ。米国人は時に思いもかけない行動に出て、ロシアのこうした場所や他の弱い場所を噛み付こうとするからだ。一言でいえば係争地域はしかるべく守られていなければならないということだ」